ドイツの自然療法・生活療法を訪ねる

ドイツの自然療法・生活療法

はじめに

長岐俊彦
医療ジャーナリスト


 このサイトでは、ドイツのいくつかの保養地と、そこでの治療プログラムをご紹介します。
 保養地、あるいはヘルスリゾートというと、日本の方々の多くはレジャー施設のある観光地と誤解されます。
 しかし、ここでご紹介する保養地は、街全体が一つの医療施設として計画された、完全な療養の街のことです。
ちなみに、ドイツにはクア(療養)という医療制度があり、健康保険が適用されています。その保養地(ヘルスリゾート)を「クアオルト」といいます。
 
自然環境と生活行為を利用して体を治す

クアにおける治療法は、基本的に「生活療法」と「自然療法」です。
自然療法とは、きれいな空気、日光、温泉(鉱泉を含む)、清水、森林、自然の起伏、高原、海洋などの「自然環境」を利用するもの、薬用植物や野菜の有効成分などの「自然の素材」そのものを利用するものなどいいます。
 生活療法とは、食事、運動、休息、入浴、娯楽、睡眠…などの、日常の「生活行為」を利用するものをいいます。

 自然療法、生活療法というと、日本人の中には、何やら怪しい治療法と思われる方がいらっしゃるかも知れません。しかし、多くの病気の原因が不健康な生活習慣と、不健康な生活環境にあることを考えるならば、薬で症状だけを押さえ込む「現代医療」に比べて、生活療法、自然療法は、はるかに優れた、そして最も自然な「健康回復法」であると思います。

 ご紹介する保養地の治療法には、そんなことが本当に治療効果があるの…と思われるものもあるかも知れません。しかし、元来、人間は自然との関係の中で生存してきたのですから、自然界には体の生理反応を有効に動かすものがたくさんあります。
 日本の現代医療が、いつの間にか「薬万能主義」になってしまったために、自然環境や自然の素材が、「体の治す力」を引き出してくれることを忘れてしまったのです。
 
生活療法と自然療法の組み合わせによって
相乗効果を引き出す

 
 クアの目的は、一時的に病気の症状を治すということではなく、「病気の原因が潜んでいる体の根本を正し、その結果として病気を治す」ことにあります。そのため、クアでは生活の全てを利用し、それに自然療法を加えて治療を行っていきます。
 その結果、体質が改善され、生活習慣も、気持ちも変わり、病気になる前よりも元気な体と心を手に入れることができる…といいます。
 
 日本でも、薬一辺倒ではなく、こうした考えの医療がいつの日か実現することを願ってみません。 
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# by na-toshihiko | 2010-08-18 14:52

ドイツ・自然療法との出会い

ドイツ・自然療法との出会い


長岐俊彦
医療ジャーナリスト


体には治す力がある

私たちの体には、病気を防ぐ力があります。それを「免疫力」といいます。
また、病気や怪我をしたとしても、体にはそれを治す力が備わっています。それを「自己治癒力」といいます。
しかし、免疫力や自己治癒力は、どんな場合にでも十分に発揮されるわけではありません。例えば、不安定な精神状態、睡眠不足、疲労の蓄積、悪い栄養バランス、運動不足…などが続くと、その力は低下し、病気を進行させることになります。
そこで、免疫力や自己治癒力を維持するためには、こころの安定、十分な睡眠、良質な食事、休養、適度な運動などを欠かすことができません。

病気を治すのは自分自身

今から十数年前、私は医療の取材にドイツを訪れました。
何人かの医療専門家にインタビューした中で、ベルリン自由大学医学部・自然療法科・部長教授(当時)のマールテ・ビューリング先生との出会いは、医療に対する私の常識を根本からくつがえすものでした。
それまで私は、「病気は医師や薬が治してくれる」ものと信じ込んでいました。ところが先生は、「病気を治すのは自分自身なのです」といいます。
また、『病気の原因は自分の「体とこころ」にあるのだから、薬で症状を消すだけではなく、その体とこころを根本から改善する必用があります。そのためには、生活習慣を改めるとともに、自然療法や生活療法を利用しながら、病気に負けない体とこころをつくることが大切』といいます。

自然療法・生活療法とは、薬を使わずに、自然環境や自然の素材、日常の生活行為を利用して体の不調や病気を治す治療法のことです。
現代医療の先進国・ドイツで、自然療法・生活療法という治療法が行われていることが信じられませんでした。
すると先生は、『ドイツには自然療法・生活療法を集中して行う「療養のための保養地」が全国にあるので、もし興味があるのなら、その実際を見てみなさい』といいます。

そこで私は、ドイツ国内の保養地を巡り続けました。
そして、現在の日本の医療に欠けている「もう一つの医療」に出会いました。
また、私たちの体には「治す力」があることを学びました。

自然療法・生活療法とは
自然環境、自然の素材、生活行為を利用する
治療法のこと


自然療法・生活療法とは、自然環境や自然の素材、生活行為を利用して、自分で治す治療法をいいます。
自然環境とは、きれいな空気、日光、清水、樹木、森林、自然の起伏、高原、海洋、気候(気温)などのことです。自然の素材とは、植物や野菜の有効成分、鉱泉、鉱泥などのことです。生活行為とは、食事、運動・休息・入浴・娯楽・リラクゼーション・睡眠、生活のリズム、生活の節制などをさします。
 
自然療法・生活療法の目的は、薬で強制的に病気の症状を消すのではなく、「病気の原因が潜んでいる体の根本を正し、その結果として病気を治す」ことにあります。そのため、治った後に再発することが少なく、また、前にもまして元気な体を手に入れることができるといいます。

日本の医療は間違っている

現在、日本には生活習慣病や、現代病といわれる複雑な体調不良が増え続けています。
日本では、その治療には薬が処方されるだけです。そして治らずに、死ぬまで薬を飲み続けなければならない人がたくさんいます。高血圧の患者さんに「降圧剤」を与えても、一時的には血圧が下がりますが、根本治癒にはなりません。アトピー性皮膚炎の患者さんに「ステロイド剤」が処方されますが、これもまた根本治癒にはなりません。ウツ病の患者さんに「抗ウツ剤」を与えても、解決はできません。
生活習慣病、現代病の多くは薬だけでは治せない病気なのです。むしろ、その改善には自然療法・生活療法が有効です。しかし残念ながら、日本の医療(健康保険が適用される)の中には、自然療法・生活療法は含まれていません。
なぜ日本の医療は、体やこころの根本的な改善を忘れて、一時的に症状を抑える「薬づけの医療」になってしまったのでしょうか?
なぜ日本には、自然や生活を利用して、病気や体調不良の改善を図る「医療施設」や「保養地」が存在しないのでしょうか?
 
ドイツの保養地医療の取材を重ねているうちに、日本の医療は大きく偏っていることに気付きました。本音をいうと、日本の医療は間違っています。
 
そんな思いから、ドイツにおける自然療法・生活療法の実際と、その治療に専念できる保養地のいくつかを書きとめてみました。ぜひ、お読みください。
そして、同じ思いを持たれる方は、ぜひ、お便りをください。
 
 
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 17:36 | ドイツ・自然療法との出会い

ドイツの自然療法・生活療法

ドイツの自然療法・生活療法

薬を使わずに、自然環境や日常の生活行為を利用して体の不調や病気を治す。
その上、病気を抱える体質そのものを改善する自然療法。
現代医療とは異なる、ドイツのもう一つの医療をご紹介します。


ドイツと日本の医療の違い

日本人の多くは、病気になった時に薬で治そうとします。また、薬を出してくれる医師は「親切な医師」で、薬をくれない医師は「ダメな医師」と思いがちです。
一方、ドイツの人々は病気になった時に、すぐに薬や医師に頼るのではなく、まずは自分で治す努力をします。その方法の一つに、おばあちゃんに教わった薬草(ハーブ)の利用や、食事の工夫、体の保温、十分な睡眠などの、いわゆる伝統的な家庭療法があります。また、さまざまな「自然療法」を紹介した一般向けの良質の医学書が普及しているので、その中の治療法を利用する場合もあります。
医師もまた、患者に自分自身で治す努力や自然療法の利用を勧めています。

もちろん、ドイツでも「現代医学(日本でいうところの西洋医学)」による治療法が一般的に行われています。ケガや急性の感染症といった早急に治療を必要とする病気には、即効性のある現代医学の治療がほどこされます。また、安静が必要な場合には、病院に入院して治療を受けます。
一方、さまざまな生活習慣病や、慢性病、肥満、免疫疾患、ストレス性疾患、虚弱体質、あるいはまた老化による身体機能の低下などの、薬だけでは根本治癒の難しい病気や体調不良の改善には、自然療法が利用されます。
また、自立した生活が可能であれば、保養地に長期滞在して自然療法でじっくりと健康回復を図る「転地療養」を選ぶことができます。その転地療養を「クア」と言います。

*クアについては、後述の<自然療法と生活改善に専念する「クア」という医療制度>をご参照ください。

生活行為+自然素材+自然環境
を組み合わせて体を治す


さて、ドイツにおける自然療法とは、どんな治療法を指すのでしょうか?
日本人にとって分かりやすい自然療法の一つは、ヨーロッパで広く利用されているハーブ(薬草)療法でしょう。
実は、自然療法にはたくさんの種類と、目的に合わせた治療法があります。まずはその概要をご説明しましょう。
自然療法を大別すると、体の根本治癒に欠かせない基本療法、生活行為を利用するもの、自然の素材を利用するもの、自然環境を利用するもの、専門治療師による治療などに分類されます。

◆基本療法
基本療法とは、病気を抱える体質そのものの改善、生理活性、基礎体力の強化、心の安定、生活の節制などの、健康な体を再構築するための基本的な治療法のことです。これには食事療法、運動療法、精神療法、規律療法があります。また、それぞれの中にはたくさんの治療法があります。(詳細は後述)
・食事療法
・運動療法
・精神療法
・規律療法
この四つの基本療法は、建物でいうと土台と構造作りに該当する治療法です。

◆生活行為の利用
生活行為とは、基本療法に重複しますが、食事、運動、呼吸、休息、リラクゼーション、娯楽、入浴、睡眠などのことです。また、生活の節制や規律ある生活を送ることも、治療に欠かせない要素になります。

◆自然素材の利用
治療に利用される自然素材には、薬用植物(ハーブ)や、食べ物の有効成分、温泉(鉱泉を含む)、鉱泥などがあります。

◆自然環境の利用
自然環境とは、きれいな空気や、日光、清水、草花、森林、自然の起伏、高原、海岸、気候(気温)、あるいはまた公園(治療用に設計された)などのことです。例えば、日光浴や森林浴、気候療法、高原療法などがこれに該当します。

◆専門治療師による治療
専門治療師による治療には、さまざまなマッサージや、温熱治療、吸引療法、ハリ治療、体の矯正治療、電気治療などがあります。ドイツ特有のクナイプ式水療法もこの中の一つです。(詳細は後述)

自然療法の多くは、体の生理反応を利用(活性化)して治癒力を高める治療法です。
その応用には、体質を改善するもの、生理反応を引き出すもの、精神状態を安定させるもの、症状を緩和するもの…など、それぞれの役割をもつ治療法が組み合わせてほどこされます。その方が、相互作用によってより高い効果を得ることができるからです。

ちなみに日本では、サプリメントだけ、アロマだけ、マッサージだけ、運動だけ…と、単独での応用が一般的ですが、それだけでは十分な効果を得ることができません。

体質を改善して
病気を根本から治す


自然療法が向いているのは、偏った生活習慣が原因の病気や、心理的要因が原因の病気、免疫の異状が原因の病気、身体機能の障害などの、薬では治療の難しい病気や体調不良です。
例えば、
・悪い食生活や肥満からくる糖尿病や高脂血症
・心臓・循環器系疾患、呼吸器系疾患
・消化器不全
・婦人科系疾患
・自律神経失調症や不眠症などのリズム障害
・免疫の異常によって発症するアトピー性皮膚炎や喘息、花粉症
・その他の、さまざまなストレス性疾患
・リウマチや神経痛、関節痛、腰痛
・老化に伴う体の機能障害
・また、ケガや骨折などのリハビリ
などと、じつに多岐に渡ります。

これらの病気や体調不良の改善には、
・偏った体質を改善する
・抱えているストレスを解消する
・精神状態を健全にする
・生理反応を正常にする
・自己治癒力を高める
・身体機能の回復に努める
などの、「体とこころの改善」が必要です。

自然療法の多くは、その「体とこころの改善」を目的にしています。また、自然療法の多くは自分自身で実践する、極めて能動的な治療法です。そして、体とこころが改善していくに従って、体調不良は消え、病気も治っていきます。その上、病気になる前よりも健康な体を手に入れることができます。

自然療法と生活改善に専念する
「クア」という医療制度


ドイツには保養地に滞在して自然療法と生活改善に専念する「クア」という医療制度があります。「クア」とは「転地療養」のことです。クアには治療費はもちろん、滞在費にも健康保険が適応されます。そのための保養地を「クアオルト」といいます。
クアは病気や症状を治すだけではなく、「体質からこころの問題」までの改善を図る、日本にはない医療システムです。

保養地で療養…というと、日本では「温泉湯治のようなもの」と思われるかも知れませんが、実際は大違いです。日本の湯治は、温泉に入り、ついでにマッサージを受ける程度のものでしかありませんが、ドイツにおけるクアは、クアの街として認定された保養地で、サナトリウムや、あるいは医療体制の整ったホテルに滞在して、さまざまな自然療法による治療と、生活習慣の改善を行う、極めて全人的な総合医療なのです。

クアは主に、生活習慣病や慢性病、肥満、免疫疾患、虚弱体質、ストレス性疾患、老化に伴う身体機能の低下などの改善や、病後の体力回復などに利用されます。
例えば、悪い食生活や肥満からくる糖尿病や高脂血症、心臓・循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器不全、婦人科系疾患、自律神経失調症や不眠症などのリズム障害、免疫の異常(ストレスが原因)によって発症するアトピー性皮膚炎や喘息、リュウマチや神経痛、関節痛、腰痛、老化に伴う体の機能障害、またケガや骨折などのリハビリ…などです。
これらの病気や体調不良は、薬で抑える治療法だけでは根本的な解決ができません。むしろ、自然療法と生活行為を利用して、病気を抱えた体を根本から立て直す「クア」こそ、有効な治療法なのです。

クアにおける多様な自然療法

クアは、先ほどの四つの基本療法に、植物(薬草)療法を加えた五つの治療法を土台にして進められます。
体質を作りかえる「食事療法」、体を動かして生理活動を活発にする「運動療法」、植物の薬効成分を利用する「植物療法」、病気の原因の一つであるストレスや悲観的な感情をコントロールする「精神療法」、生活習慣を正して体のリズムを作り直す「規律療法」です。

・食事療法
・運動療法
・植物(薬草)療法
・精神療法
・規律療法


その上に、病状に応じてさまざまな治療法が加えられ、治療プログラムが作成されます。
例えば、温泉の利用(入浴、飲泉)や、泥浴・サウナなどの温熱治療、マッサージやハリ治療、体の矯正治療、水蒸気の吸引治療、電気治療、人工光線を用いる光線療法などです。ドイツに特有な自然療法の一つであるクナイプ式水療法(後述)も利用されます。

クアの生活では、クアドクター(総合医)、専門医、食事療法師、運動療法師、精神療法師などがチームになってお世話してくれます。ちなみに、療養客を「クアゲスト」といいます。
診察はクアドクター(総合医)が行い、クアの処方箋(治療プログラム)を作成します。病気によっては専門医も一員になります。専門家の手を必要とする治療はテラピスト(療法師)が担当し、食事や運動、精神面などの療養生活のさまざまな側面を専門家がサポートしてくれます。レストランやカフェでも処方箋を見せると、それに応じた食事やハーブティーを出してもらうことができます。街の中心にあるクアパーク(後述)の利用にも、その処方箋が必用です。
また、治療プログラムは病気や体調の改善に合わせて調整されていきます。

5つの基本療法の概要

●食事療法
食事を利用して、体質の改善や病気の治癒を図る治療法です。また、絶食や食事の制限などもこの中に含まれます。
クアで提供される食事は、完全無農薬の有機栽培の素材に限られ、病状に応じて栄養バランスやカロリーなどがコントロールされて提供されます。

●運動療法
体を動かすことで、生理活動の活性や身体機能の回復、免疫力の向上などを図る治療法です。また、体質の改善やストレスの解消、精神力の強化などにも応用されます。
クアオルトにはクアパークをはじめ、リハビリ施設やスポーツ施設(治療のための)、サイクリングコースなどがあります。クアオルトでは身体機能のリハビリから体力の強化までの、幅広い運動療法の実践が可能です。

●植物(薬草)療法
薬草や、植物の機能性成分を用いる治療法です。
クアで利用される薬は植物性が原則です。また、病気(症状)別に作られたハーブティーや、薬草の湿布、薬草入浴、薬草成分の入った水蒸気の吸引、香りの利用など、植物療法にもさまざまなものがあります。

●精神療法
病気の発症に関わるストレスや、悲観的な感情などの心理的要因を解消する治療法です。クアでは、リラクゼーション、瞑想、娯楽による楽しみなどの、精神面のコントロールがとても重要視されます。

●規律療法
緊張とリラックス、運動と休息、仕事と休日というように、対極にあるものを組み合わせることによって、体と心の一体感を作り、生理的なバランスを調整する治療法です。また、生活の節制や、規律ある生活を送ることも規律療法の大切な要素です。
 
治すのは患者自身
それを支える医師・療法師


クアの治療に当たるのは、クアドクター(総合医)と専門医、療法師(テラピスト)です。クアオルトに到着すると、まず始めにクアドクターによって診察や検査が行われ、治療のプログラムが作成されます。治療方法は自然療法でも、検査は最先端の設備と技術で行われます。その点は、いかにも科学の国・ドイツらしいところです。
クアゲスト(療養客)はそのプログラムに従い、通常は3週間滞在して、病気の治療と体質改善に取り組んでいきます。(病状によってはもっと長く滞在することがあります)
ファンゴ(泥)療法やハリ、マッサージ、整体、水療法などの治療は専門の療法師が担当します。ちなみに、ドイツにはハイルプラクティカーという制度があり、療法師は医師に準じた資格を持っています。

しかし、クアでの主役は医師や療法師ではなく、クアゲスト自身です。医師を指揮者に、療法師を伴奏者に、そしてクアゲストを歌手に例えれば分かりやすいかもしれません。病気を持つ体を治すのはクアゲスト自身であり、医師や療法師はそれを手助けして導いていくガイド役…という位置付けです。
クアの生活を通して、クアゲストは病気や体の不調を引き起こした「原因」を理解することになります。そして、その改善方法を学び、さらに状態を悪くすることのない、また再びそのような状態を招かない生活習慣を身に付けて帰って行きます。クアでの治療法の多くは、症状の治療というよりも、病気に負けない体をつくることや、セルフケアのためのトレーニングといってもよいでしょう。

生活行為を利用して体を治す

薬の治療に慣れきってしまった日本の方々には、生活を利用する治療法といっても、すぐには理解しにくいことでしょう。
クアの目的の一つは、病気の原因の一つである「体質とこころ」の改善にあります。そのため、治療には食事、運動、休息、リラクゼーション、入浴、娯楽、睡眠などの、体質の形成や精神面、自己治癒に関わる全ての生活行為が利用されます。ですから、それは生活そのものを薬にする「生活療法」といってもよいでしょう。

●食事
私たちの体をつくる原料が食べ物であることを考えれば、その人の体質の改善につながる良質の食事も治療の一環といえます。
●運動
体の生理活動を高め、基礎体力や運動能力を向上させるためにはとても大切なことです。一番簡単な運動の一つはウォーキングですが、それにはクアパークが利用されます。
●休息
体のリズムを作るために、運動には必ず休息が組み合わせられます。
●リラクゼーション
現代病の多くにはストレスが関わっています。そのため、リラクゼーションや瞑想、あるいは娯楽などによるストレスの解消もまた大切な治療法なのです。
●スポーツや娯楽
生活のメリハリや、明るく前向きな気持ちで過ごすことも、治療効果を高める大きな助けになります。
●入浴
泉質や温度、入浴方法などによって、さまざまな生理活動を引き出すことができるので、治療の助けになります。
●睡眠
体の治癒活動は睡眠中に行われます。そのため、夜の熟睡はもちろん、昼寝も大切な治療法です。

変化に満ちた生活リズムが
治癒を高める


クアでは毎日の生活リズムがとても重要視されます。
例えば、朝早起きをして新鮮な空気の中で体を動かし、芝生の上の瞑想で気持ちを鎮め、ベンチで日光浴をし、スポーツで汗を流し、ハーブティーやナチュラルな食事を楽しみ、昼寝で体を休め、自然療法による治療を受け、ぬるめの温泉にゆっくりとつかり、さまざまな生活トレーニングや病気の仕組みを教わり、コンサートやダンスを楽しみ、夜は早めにぐっすりと眠る…という、変化と楽しみに満ちたものです。
このように、一日の生活リズムをしっかりと刻むことは「規律療法」の一つで、体とこころの調和を図り、自律神経のバランスを整え、体の生理反応を活性化させ、自己治癒力を高めてくれます。
つまり、クアでは朝起きてから夜眠りにつくまでの生活そのものが「薬」と「治療」なのです。

さらにまた、クアの治療プログラムには、帰宅後の再発を防ぐための「生活トレーニング」が折り込まれます。完治しにくい病気の場合でも、症状が軽くなった状態を維持しながら、再び悪化させない「セルフケアの方法」が教育されます。
クアはまさに「リゾートホテルへの長期滞在」という感じで、豊かな自然の中で毎日を楽しみながら進められます。日本の病院のように、パジャマ姿で一日中ベッドに拘束されているわけではなく、「病気の治療」につきものの悲壮さもありません。

厳しい条件に守られたクアオルト

クアオルトとは、クア(療養)のために計画された医療の街のことをいいます。保養地がクアオルトとして認定されるためには、とても厳しい条件があります。

・体と心の治癒に役立つ自然環境であること。
・クアの医療スタッフと治療施設が整っていること。
・治療用の公園・クアパークがあること。
・提供される食品は無農薬の有機栽培や自然なもので、原則的に地元産のものであること。
・車の進入は規制され、公害が無いこと。
・リラクゼーションや安眠を妨害する騒音が無いこと。
・適切なゴミ処理やリサイクルが実施されていること。
・環境や街並みを阻害しない建物や建築材料であること。
…など等、実に多くの条件をクリアしなければなりません。

また、長期滞在の人々を退屈させないための、さまざまな娯楽施設や運動施設も必要です。そのため、認定を受けたクアオルトには、およそ健康の回復を阻害するようなものはない…といっても過言ではありません。
クアの街は何事もクアの人々が優先で、車道を渡る時には車が止まってくれます。街のあちこちに、「静かに」という小さなプレートがさりげなく置かれています。

生活習慣病やストレス性疾患を改善には、悪い生活習慣やストレスなどの、心身にマイナスな生活要因から身を離す必要があります。そういった意味では、クアオルトは理想的な「治療環境」と言えます。
また、それぞれのクアオルトには、その土地の自然特性に応じて適応症の特徴があり、自分に適したクアオルトを療養の場所として選ぶことができます。

*クアオルトの案内書に、どのような病気の改善に適しているかが記載されています。

街全体が一つの医療センター

クアオルトは街全体が一つの医療センターとして機能しています。
街の中央には必ず広大なクアパーク(療養の公園)があります。クアパークが街の中央にある理由は、療養に欠かせない治療施設の一つだからです。(詳しくは後述)
その周りに、クアホテルやクアペンション、サナトリウム、専門病院、治療センター、飲泉館、温泉施設、スポーツ施設などが並んでいます。また、娯楽を提供する多目的な集会場(クアハウス)や、コンサートホール、ギャラリー、レストラン、カフェ、日用品のお店などがあります。
街の中心には車は入れず、憩いの広場や遊歩道、小川、噴水、花壇、休息用のベンチがあります。
クアオルトがそのような街づくりをする理由は、クアは滞在中の生活の全てを利用して行われるからです。

テル+クリニック+治療センター

クアの滞在施設には、クアホテル、クアペンション、サナトリウムなどがあります。それらは、ホテルとクリニックと治療センターが一緒になったものです。その多くには医師と療法師が常駐しています。
療養の人々はそこに滞在して、医師による診察、療法士による専門治療、また、食事療法、運動療法、植物(薬草)療法、精神療法、その他の必要な生活トレーニングなどを受けます。

療法師による専門治療には、クナイプ式水治療、泥浴治療、温泉浴治療、薬草浴治療、湿布、呼吸(水蒸気の吸引)療法、マッサージ治療、整体、鍼灸治療、各種物理療法・理学療法、光線療法などがあります。
また、多くのクアオルトにはオープンの治療センターがあり、そこでも療法師によるさまざまな治療を受けることができます。

緑の公園が治療センター

クアの街には、豊かな緑に包まれた広大なクアパークがあります。クアパークとは治療のための公園のことです。その使用には「クアの処方箋」が必用です。公園を治療に利用する…というと、不思議に思われるかも知れませんが、クアパークは自然環境を利用する巨大な治療センターなのです。
そこには、長い遊歩道や、広い芝生、樹木、水の流れ、噴水、花庭などがあり、たくさんのベンチが置かれています。スポーツ施設やサイクリングコースなどもあります。
療養の人々は、この公園をウォーキングや体操、日光浴、森林浴、呼吸療法、瞑想、リラクゼーション、あるいはジョギング、サイクリングなどに利用します。これらは全て治療法の一つなのです。そこで、クアパークには治療の効果を高めるためのさまざまな工夫がなされています。

例えば、テラインクアと呼ぶ運動療法のための遊歩道があります。その遊歩道の周りにはたくさんの樹木や緑の芝生、水の流れ、噴水、ベンチなどが配置されています。また、遊歩道には起伏の変化もあり、これらは全て治療効果を高めるためのものです。
樹木は空気を新鮮にするために、芝生や木々の緑はグリーンセラピーといって気持ち和ませるために、噴水はマイナスイオンで呼吸療法を助けるために、遊歩道の起伏は心肺機能や筋力を高めるために、ベンチは運動と休息のバランスを図るために…と、この遊歩道を歩くことがそのまま治療になる仕組みなのです。

太陽に向かって配置されたベンチは日光浴のために使用されます。日光浴には気持ちを明るくする、自律神経を調整する、ウツ病を改善する、カルシウムの吸収を助けて骨を強くする、運動能力を高める、皮膚を健康にする、免疫力を高める…などの作用があるため、クアにおける大切な治療法の一つです。

「クナイプ式水療法」の水槽もあります。身を切るような冷水に足や腕を浸す水療法には、免疫力や生理反応を高める効果や、自律神経を調整する効果があります。
草丈の長い芝生は「露草踏み療法」のためのものです。早朝に朝露で濡れた芝生を裸足で歩くことで、免疫力や体の生理反応を高めることができます。冬には、雪上を裸足で歩く治療法もあります。
また、薬草園や野菜園があり、薬草の知識や、食事療法のための野菜の有効性を学ぶことができます。

ちなみに、クアの治療プログラムの基本形とクアオルト(療養の街)の仕組みは、クナイプ自然療法の生みの親であるセバスチャン・クナイプ神父(1821~1879年)が作りました。公園を治療に利用するアイデアもクナイプ神父が考え出したものです。

ドイツで見直される自然療法

自然療法の長い伝統を保持してきたドイツですが、現代医学の発達によって、一時期、自然療法は古い医療というイメージを持たれていました。
しかし近年、生活習慣病や免疫疾患、ストレス性疾患などの治療が、現代医療だけでは難しいことが分かってきたため、改めて自然療法を利用して健康回復を図る人々が増えているといいます。
国の医療制度にも、「病気を未然に防ぐほうが、より経済的で、本人にとっても良いこと」という考え方があります。そこで、ドイツ政府をはじめとして、社会全体が体質改善にも有効な自然療法の啓蒙を熱心に行っています。
またドイツでは、自然療法は医学部の必須科目になっており、医師の国家試験にも導入されています。そして、多くの医師が自然療法による治療法を取り入れています。

自然療法と健康保険

ドイツには、公的な健康保険と民間(プライベート)保険がありますが、日本と違うのは、どちらの保険も現代医学による治療と、自然療法による治療の両方に適用されるという点です。そして、クアの治療費と滞在費は健康保険でカバーされます。

クアの治療を望んだ場合、まず、かかりつけの医師の診断書を元に保険の適用を申請します。治療にかかる費用の何割が保険で認められるかはケース・バイ・ケースですが、もし100パーセント認められた場合には、保養地までの移動にかかる交通費も全額保険で支払われます。

自分の体は自分で治せる

体の不調を覚えた時に、現代医学に頼るだけではなく、自然療法も選べるドイツの医療システム。薬を飲むばかりが治療ではなく、食事や運動、生活のリズムなどを学ぶことによって、能動的に病気を治し、再発を防ぐ。
「自分の体は自分で治せる」というドイツ国民の考え方と、それを支える「クア」という医療制度は、もっとも人間的な総合医療であると思うのですが、皆さんはどう思いますか?
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 17:32 | ドイツの自然療法・生活療法

ザスバッハ・バルデン

ドイツでもっとも美しい村
ザスバッハ・バルデン

南ドイツを東西に走る黒い森。
なだらかな山の斜面に続く果樹園。
その森の空気と、果実の香りの空気療法。
山の中腹から見下ろす景色は、まさにグリーンセラピー。
ここは州主催の「美しい村コンテスト」で一位に選ばれた村です。


森の空気の呼吸療法と
ワンダーリングの村

 
 南ドイツの西端。黒い森の終わりに位置する、陽光の村、ザスバッハ・バルデンは海抜二百メートルから千百メートルに至るなだらかな山の斜面にあります。その一帯にはブドウ、りんご、チェリー、プラムなどの果樹園や、緑の牧草地が延々と続いています。山襞には清水が湧いています。ザスバッハのバッハとは小川という意味。その清流が村の名の由来です。
村はずれの小川には古い小屋水車があり、ゆったりですが、水車は今も現役で働いています。
森の樹木や牧草地、ブドウ畑などが織り成す緑のパノラマの中に、農家の赤茶色の瓦屋根が、ポツリ、ポツリとアクセントを添えていて、じつにのどかで美しい村です。
 もちろん、ここには農薬も化学汚染もありません。ビニールハウスもありません。栽培されている果物や野菜は有機栽培。日光を存分に浴びながら、自然のままに育てられています。 

黒い森に浄化された空気。清水の流れが生み出すマイナスイオン。樹木が発するフィトンチッド。果樹の香り。そして森の地形。これらは呼吸療法、森林浴、運動療法にとって最適な環境なのです。
1969年、ザスバッハ村は「空気(呼吸)療法」の保養地として、また1979年には、もっとも気候の優れた国指定の「クナイプ自然療法・保養地」として認定されています。
なだらかな山の斜面と森の空気を利用した運動療法は、呼吸器や心臓・血管病などの療養に向いているとされ、ワンダーリングの地としても高い人気です。ワンダーリングとは、なだらかな山歩きのこと。
この村では、樹木から精油の採集もされています。

なだらかな山の斜面一体には、花の香り、果樹の香りが心地よく流れています。山腹の要所要所にはベンチが置かれ、遥か彼方のライン河、そしてフランス領に至るまでの緑の景観にひたることができます。まさにグリーンセラピー、アロマセラピーの世界で、緑の濃淡の余りの美しさに身も心も洗われる思いがしてきます。
そういえば、ドイツ人の最も好きな色は緑色です。


花で家を飾る
百年来の村のしきたり


村の建物は、急勾配の屋根を持つ木軸工法で、西南ドイツ・山間部の伝統の造りです。
家々の窓やテラスは、みごとに花で彩られ、家の周囲も草花でいっぱいです。花で飾る習慣は百年来の伝統といいます。村の建物は、バーデン・ヴェルグ州の景観保護条例により、異なる様式への改築は許されないのだそうです。
村のホテルやペンションも同様の造りで、その伝統建築が楽しみで訪れる観光客も多いといいます。
この地方は日光が豊富なので、ワインも美味しく、村特産のシュナプスというチェリーのリキュールもお勧めの一つです。
 道路から各家に向かうアプローチには、手づくりの牧歌的な郵便受けが立てられ、道端の無人の屋台には、自家製のジャムや果実酒が手製のラベルを身にまとって「ウチのがイチバン美味しいのよ…」と自慢そうに並んでいます。
 それにしても、この村の空気(香り)の美味しいこと…。


治療法の解説

◆森林浴+呼吸療法+ウォーキング
樹木が発するフィトンチッド(化学物質)や、森の樹木に浄化された空気には、心身の沈静作用と共に、カラダの本能(治癒力)を目覚めさせる作用があります。清水の流れが生み出すマイナスイオンも同様です。
森林浴の呼吸療法と、山の斜面を利用したウォーキング(運動療法)を組み合わせると
効果がさらに高くなります。
呼吸器や心臓・血管病、糖尿病、ストレス性の病気の改善に役立ちます。

◆グリーンセラピー
緑色は暖色(興奮)と寒色(沈静)のちょうど中間にあり、中性の性格の色です。そのため、緑色にはこころに安心感を与える作用があります。自然の緑に触れると、こころが休まるのはそのためです。
また、持久力、復元力をもたらし、ストレスや不安感などを解消する作用もあります。
人類が進化の過程で敵から身を守るために森に身を隠したことから、本能的に緑の森に安心感を覚える…ともいいます。


●地理案内

ザスバッハ・バルデン
バーデン・ヴュルテンベルク州の西端。なだらかな山の斜面にある、フランス国境の近くに位置する村。バーデンバーデンに近い。鉄道の駅はない。

Kurverwaltung im Kurhause Zum Alde Gott
TalstraSe 51 D-77887 Sasbachwalden
TEL 07841-1035-19433
FAX 07841-23682
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 17:17 | ザスバッハ・バルデン

バート・ノイエンナール

生命の温泉とファンゴ療法
バート・ノイエンナール

「生命の温泉」という名の巨大な温浴施設。
100年の歴史を誇る「自然療法・治療館」。鉱泥を利用した「ファンゴ療法」。
ドイツ中西部、ワインと渓谷で知られるアール川がライン河に注ぐ手前に、温泉保養地・バート・ノイエンナールがあります。


女性に人気の若がえりの街

バート・ノイエンナールには、ナトリウムやマグネシウムを含んだ36℃の炭酸泉が湧き出ています。近郊ではファンゴ療法に最適な「鉱泥」も採掘されます。鉱泥とは「泥の温熱療法」に使用される、鉱物質をたくさん含んだ土のことです。
現在、この街には二つの特徴的な施設があります。一つは「アー・テルメン(生命の温泉)」という名の巨大な温浴施設で、もう一つは百年の歴史を誇るバーデハウス(自然療法・治療館)です。
この街の療養メニュウには、健康回復やリラクゼーションにプラスして、美容と若がえりの治療が充実しています。そのため、療養客は中年女性が多く、街も施設もじつにエレガントなたたずまいです。


治療入浴と
リラクゼーション入浴


 まずは、温泉療法についてお話をしましょう。
 ドイツを始めヨーロッパの温泉湯治には、二つの方法があります。
一つは、温泉療法師の手を借りる「治療入浴」です。これには、強い水流を利用するマッサージ入浴、水中に電流を流す電気治療入浴、温めた泥に入る泥入浴などがあります。これらの治療は、個室で専用の治療用バスタブを利用して行われます。また、治療入浴はそれだけで治療が完了ということはなく、マッサージや整体療法、ハリ治療などの、いくつかの治療法と組み合わせて施されます。

もう一つ湯治法は、「37℃」の微温のお湯に長時間入り続ける「リラクゼーション入浴」です。この長時間入浴はヨーロッパに広く普及している湯治法です。ドイツにはそのための大規模浴場が全国にあります。


37度の微温浴が、
カラダの治癒力を引き出す


ここでは、二番目の湯治法の「37℃の温泉への長時間入浴」についてお話をしましょう。

37℃というお湯の温度は、熱いお風呂に慣れている日本人にとっては、とてもぬるい温度です。
それでは、なぜ「37℃」の微温水に入るのでしょうか。
37℃のお湯への入浴は、入っている人の体温を36度ほどに保ちます。カラダがもっとも安静した状態の体温で、睡眠中のそれと同じです。また、胎児が母親の羊水の中で眠っているのと同じ条件でもあります。そのため、長時間入っていても疲労することなく、リラクゼーションすることができます。

次に、なぜ長時間入るのかについてです。
入浴には、水の「浮力」によって心身の緊張をほぐす効果があります。全身の緊張がほぐれてリラックスすると、次第に疲労は回復。やがてカラダの中では「修復」や「自己治癒」の活動が動き始めます。これは、睡眠中に行われる「修復」や「自己治癒」と同じことです。
また、水には「水圧」があります。その水圧が適度に血管を圧迫するので、血液の循環がスムーズになります。益々、「修復」や「自己治癒」の活動がしやすくなります。
そして、カラダの自己治癒を十分に引き出すためには、3時間ほどの「長時間入浴」が必要です。また、長時間入ることで理想的なリラクゼーションを得ることもできます。
その上、温泉の成分に塩分(ナトリウム・マグネシウム)が含まれているならば、これこそ天然の「羊水」で、皮膚に負担をかけずに、また快適に何時間でも入っていることが可能です。

このような理由から、「温泉」+「37℃」+「水の浮力」+「水圧」+「長時間入浴」という入浴法が行われるようになりました。
この微温の長時間入浴は、最高のリラクゼーションとカラダの再生を図るための、とても科学的な湯治法なのです。

一方、日本の温泉入浴は、一般的に39度以上の高温浴です。この温度のお湯に長時間入ると、リラクゼーションどころか、カラダは余計に疲労することになります。そのため、日本では短時間入浴が普通です。

*自己治癒の活動
自己治癒の活動は睡眠中に行われます。
睡眠は90分の周期の中で、深い睡眠(ノンレム睡眠)と浅い睡眠(レム睡眠)をくり返します。そして、一回目と二回目の深い睡眠の時に、自己治癒の活動がもっとも活発になります。その間の睡眠時間は3時間です。
微温の長時間入浴は、睡眠と同様に、自己治癒の活動を引き出す入浴法です。

*ドイツ人と日本人の体感温度の違い
ドイツ人は肉食系なので、日本人に比べて寒さに強い民族です。
37℃の微温水は、日本人にとってはかなりぬるく感じられます。日本人が家庭で行う場合は、38℃弱ぐらい(冷たくなく、汗が出ない温度)が適温です。ただし、これも季節によって若干の温度調整をしながら入ることをお勧めします。

*温度と入浴時間によって生理的反応は異なる
入浴の効果は、お湯の温度と入浴時間、また入り方によって、大きく異なります。
詳しくは、別添資料をご覧ください。


「生命の温泉」で
リラクゼーションとカラダの再生


ここ、バート・ノイエンナールには「アー・テルメン(生命の温泉)」という名のテルマル・バード(温泉施設:スパ)があります。流線型の大屋根を持つモダンな建造物で、この街を代表する療養施設の一つです。
天井の高い広い館内には、大小いくつもの温泉プールがあります。それぞれの浴槽には、カラダの緊張をほぐすための噴流や、落水、流水、気泡浴などのさまざまな機能が設けてあります。
湯治客はこの37℃の温泉に、何時間も浸かりながら、思い思いのリラクゼーションの時を過ごします。
また、入浴とともにこぞって日光浴をします。日光浴には、ウツ病や骨粗しょう症、乾癬の予防、免疫力の強化、気持ちを明るくする…などの効果があるからです。そのため、温泉プールは屋外の芝生の庭にも延びていて、温泉に浸りながら日光浴することができます。
ドームの中二階には、日光の少ない季節のために、太陽光線と同じスペクトルに設計された人工光線の光線浴装置がたくさん並んでいて、いつでも人工日光浴が可能です。


温冷の交互浴で自律神経を調整

「アー・テルメン」の温泉プールの下のフロアは、カラダの生理能力を高めるためのフロアです。温度違いのサウナや、冷水浴槽、リラクゼーションスペース、マッサージルームなどが並んでいます。

ドイツ(北ヨーロッパ)では高温浴にはサウナを利用します。サウナ室は温度別に複数あり、スチームサウナもあります。
サウナの利用法は、最初にサウナに数分間入ってカラダを温め、続いて短時間の冷水浴でカラダに刺激を与えます。その後、水分を補給しながら、寝椅子で15分ほどのリラクゼーションをして、カラダが平穏に戻るのを待ちます。そして、この「高温浴+冷水浴+リラクゼーション」の組み合わせを数回くり返します。

高温浴と冷水浴の組み合わせは、交感神経と副交感神経を交互に刺激して、自律神経のリズムを調整する治療法です。
北ヨーロッパでは冬が長く、その間、日照時間や日照量が低下するため、自律神経のリズムに障害がおきます。その結果、季節性ウツ病や睡眠不良などに悩む人が多くなります。そこで、その改善や予防のためにサウナが利用されます。
 また、サウナの温冷交互浴には、新陳代謝の促進や、免疫力の強化などの効果もあります。高温と冷水による皮膚への交互刺激は、皮膚の持つさまざまな機能を強化し、肌の老化防止にも役立ってくれます。
サウナは汗を出すためのものではなかったのです。

*大量発汗の注意
大量の汗をかくと、皮膚が疲労してダメージを受けます。それを防ぐためには、ニンジンジュース(ベータカロテン)がお勧めです。

*ドイツでのサウナ浴
 ドイツでは温泉プールには水着を着用しますが、サウナ浴は全裸で男女混浴です。
 初めての方にはビックリですが、知っておいてください。また、必ずバスタオルを敷いてその上に座ります。汗でベンチや床を汚さないためのマナーです。


東西の治療法を集めた
治療と若がえりのバーデハウス


ロマネスク様式を思わせるエレガントなバーデハウス(治療館)は、この街を象徴する施設の一つです。館内の色彩は淡いベージュに統一されていて、かすかに音楽が流れています。ロマンチックなガラスの器には「香」が焚かれ、ところどころに「静かに」というプレートが掲げてあります。本当に静かです。長い廊下の両側には、治療室が整然と並んでいます。
純白のバスローブを着た療養客が通り過ぎます。次の治療室に移動する人、あるいは、すべての治療を終えてホテル棟に帰る人です。時折、治療師さんがファンゴ療法の温かい泥を入れたバケツを、長い引き手の古風なカートで引いていきます。
 まるで、時間が止まったような錯覚を感じます。

この治療館ではヨーロッパ各地の自然療法を始め、中国の漢方、インドのアーユルベーダ、最新の物理療法などの治療法を受けることができます。
水の刺激を利用するクナイプ式水療法、温めた鉱泥を利用するファンゴ療法、薬草を利用する植物(ハーブ)療法、炭酸泉の入浴療法、ワインの酢療法、呼吸(吸引)療法、各種マッサージ、ハリ、灸、中国漢方、光線療法、電気療法、運動療法、水中運動療法、食事療法…など等、百種類もの治療法が用意されています。
これらの治療法は、個別の病状に合わせて、いくつかを組み合わせて施されます。その組み合わせはクアドクター(療養医)によって処方されます。
館内にはクアドクターが常駐していて、ビジターにも目的(症状)に合わせた治療プログラムを処方してくれます。
また、この治療館には、女性客のためにスキンケアや若がえりのトリートメントが用意されていて、女性の療養客に大人気です。
カラダは元気に、若々しく、そして肌は美しく生まれ変る…。そんな夢をかなえる治療館です。

治療にも美容にも効果を発揮する
ファンゴ療法


さまざまな治療法の中でも、バート・ノイエンナールを代表する治療法の一つはファンゴ療法です。ファンゴとは火山性の鉱泥のことで、それには鉄分を始めさまざまな鉱物質が含まれています。そのため、保温性や熱の浸透性にとても優れているといいます。

ファンゴ療法は、その鉱泥に、さらにハーブを混ぜて発酵分解させたものを使用します。その泥を約40℃に温めて、最初は背骨から背中全体に、続いて全身に厚く塗り、シーツと毛布でぐるぐる巻きにされてベッドに横たわります。カラダが温まってくると発汗が始まり、全身がビッショリになります。約30分間の温熱・発汗の後、シャワーで泥を落とし、ハーブティーで水分を補給。一休みします。続いてマッサージなどの治療を受け、最後はベッドでぐっすりと眠りにつきます。
 治療後の睡眠には、とても重要な意味があります。この間に、カラダの修復や自己治癒の活動が行われるからです。

ファンゴ療法には、血管を広げて血液循環を高める、新陳代謝を高める、背骨を支える筋肉の緊張をゆるめて神経の伝達を良くする、脊髄の造血活動を高める、リンパ液の循環を高める、免疫反応を高める…などの生理作用があります。
そして、リウマチなどの免疫疾患、神経痛・関節痛などの改善、老化による身体機能の回復などに加えて、若がえりや美肌効果もあるといいます。

アール川を上流に進むと

 アール川を上流に少し進むと、ローマ時代の入浴場の遺跡があります。河畔の南側に面した山の斜面にはブドウ畑が続いています。この地方では、美味しいワインが醸造されます。
さらに進むと、城壁で囲まれた中世そのままの小さな街があります。街の名はアール・バイラー。門をくぐると、中世そのままの古い建物が並んでいます。各々の建物の軒先から突き出たポールに、長い丈の旗がはためいています。まるで、おとぎの国に迷い込んだような美しさです。広場にはカフェやレストランが並んでいます。石畳の脇には人工の水路があり、澄み切った水がとうとうと流れています。
バート・ノイエンナールに療養に訪れた熟年のご夫婦には、青春時代の情熱を再び蘇らせてくれる、とてもロマンチックな街です。
 

治療法の解説

◆ファンゴ療法

鉱物質の泥とハーブを混ぜて発酵分解した泥を温めて全身に塗り、シーツと毛布でぐるぐる巻きにして発汗させる温熱療法。
ファンゴ療法には、血行を促進して代謝を高める、背骨の筋肉の緊張をゆるめて神経の伝達を良くする、脊髄の造血活動を高める、免疫反応を高める、自律神経の調整を図る…など、多くの生理活性作用があります。
リウマチなどの免疫疾患、神経痛・関節痛の改善、自律神経の調整、身体機能の回復などに加えて、若返りや美肌効果もあります。

◆37℃のリラクゼーション入浴
37℃の微温への長時間入浴には、心身の緊張をほぐして体を安静状態にし、睡眠と同じように、疲労回復と共に、体の治癒力を引き出す作用があります。

◆温冷交互入浴
サウナによる温冷交互浴は、交感神経と副交感神経を交互に刺激して、自律神経のリズム調整を図るものです。
自律神経失調症の改善、季節性ウツ病の予防・改善、免疫力の強化、運動不足の解消などの効果があります。
また、高温と冷水による皮膚への交互刺激は、皮膚の持つさまざまな機能を強化し、肌の老化防止にも役立ちます。

●地理案内

バート・ノイエンナール
ラインラント・ブファルツ州の北部に位置し、ノルトライン・ヴェストファーレン州との州境にある温泉保養地。かつての首都ボンから車で三十分の距離で、鉄道のアクセスもある。

AKTIENGESELLSCHFT BAT NEWENAHR
KugartenstraSe 
Bad Neuennahr-Ahrweiler 
TEL 02641-801-219
FAX 02641-801-146
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 16:02 | バート・ノイエンナール

バート・ナウハイム

ザリーネが発するマイナスイオンと
ミネラル豊富な炭酸泉の街

バート・ナウハイム

古代の製塩装置・ザリーネを利用した「呼吸療法」。
炭酸ガスとミネラルを含んだ鉱泉水の「温泉療法」。
バート・ナウハイムはフランクフルトから北へ一時間弱の距離にある療養の街です。


生命の水、ソーレ

バート・ナウハイムの街には「ウーサ川」という小川があります。流れる水には塩分が含まれ、その塩水を人々はソーレと呼んでいます。
発掘遺跡によれば、この周辺にはその塩水を求めて、紀元前の遥かに昔から人間が住んでいた形跡があるといいます。紀元前5~6世紀には北方民族のケルト人が住み、この塩水で製塩を始めています。紀元後になると北上したローマ人が住みつき、2~3世紀にはゲルマン民族が、5~6世紀にはフランケン民族がこの塩の小川を支配します。

5世紀にはすでに、水車とザリーネ(製塩装置、詳しくは後述)によるシステマチックな製塩技術が開発され、中世期にはドイツを代表する製塩の街として栄えていたといいます。

治療の装置に生まれ変わった
巨大な製塩装置・ザリーネ


街の中心を広大なクアパーク(療養のための公園)が占めています。
その公園の数ヶ所に、高さ15メートルほどの黒くて長い、不思議なトンネル状(高架)の建造物があります。その建造物はザリーネ(SALINE)といい、古い時代の製塩装置なのだそうです。

トンネルの両壁は、樹木の小枝を幾重にも編み重ねてつくられています。そのてっぺんから、水車で汲み上げられた塩水が小枝の網目にぶつかり合いながら、ゆっくりと滴り落ちています。日光と風で水分は蒸発し、足元の水路に落ちる頃には高い濃度の塩水になります。かつては、その塩水を煮詰めて「塩」を造っていました。
ちなみに、塩水は今でも自動水車によって15メートルの高さまで汲み上げられています。この水車による汲み上げ方法は、5世紀頃には開発されていたと考えられています。

19世紀に入り、他の地域で岩塩の採集が進むと、生産性の低いザリーネの製塩方法は競争に負けて衰退していきます。
その一方で、ザリーネで働く人々の間に、ザリーネの空気に触れるとカラダが元気になる…という言い伝えがありました。19世紀には一般の人々にもそのことが知れ渡り、ザリーネの空気を求めてカラダに不調を抱える人々が集まって来るようになります。
やがて、ザリーネのトンネル内の空気には大量のマイナスイオンが含まれていて、健康回復を助けることが医学的に証明されます。すると、利用者はますます増えて、ザリーネは「治療の装置」として蘇ることになります。

治癒力を引き出す
ザリーネのマイナスイオン


ザリーネの内部は板張りの歩道になっています。黒々とした長いトンネルには屋根がなく、頭上高くに青空が長い絨毯を敷いたように見えます。内部はシンと静まり返っていて、まるでゴシック様式の教会に入ったような、厳かな気持ちになります。耳を澄ますと、カラダにかすかな水滴の音が沁み込んできます。
小枝の網目を滴り落ちる塩水は、ぶつかり合って飛沫になります。その時に大量のマイナスイオンが発生します。そのマイナスイオンの空気を呼吸しながら、トンネル内の百メートルほどの歩道を、クア(療養)の人々はゆっくりと歩いています。

マイナスイオンには心身の鎮静作用や、血圧の安定、免疫力の回復、活性酸素の消去などの生理作用があるといいます。現在のザリーネは、そのマイナスイオンの吸入と歩行運動を組み合わせた、極めてユニークな治療装置なのです。

喘息の患者さんは、ザリーネを利用した呼吸・運動療法を1日に数回、2週間から3週間続けると、すっかり改善するといいます。また、その他の呼吸器系疾患、高血圧、睡眠不良、さまざまなストレス性の病気の改善にも役立つといいます。

療養の人々はおよそ30分間、トンネル内の歩行を続け、その後、ザリーネの横のベンチや芝生でのんびりと日光浴をします。日光には気持ちを明るくする、ウツを改善する、自律神経を調整する、免疫力を高める、カルシウムの吸収を助ける、皮膚の健康を保つ…などの、さまざまな生理作用があるからです。

 もちろん、バート・ナウハイムで処方される喘息の治療プログラムはこれだけではありません。喘息の改善に必用な、ストレスケアのためのさまざまな精神療養、基礎体力を強化する運動療法、近代設備のインハレーション(吸引療法)、体質改善のための食事療法、そして植物(薬草)療法と、基本的な治療プログラムが処方されます。
 また、病状に応じて、その他の自然療法、物理療法が加えられます。 

それにしても、古代からのこの巨大な製塩装置を、治療に利用するなんて…。ドイツの自然療法のフトコロの深さに、ついつい感動。このザリーネに出会ったことで、私はドイツの自然療法をさらに深く知りたいと思うようになり、多くの保養地を訪れことになってしまいました。

炭酸泉の治療の館
シュプーデル・ホーフ


バート・ナウハイムの中心には炭酸ガスを含んだ微温の鉱泉が湧き出ています。製塩所で働く人たちは、古くからこの鉱泉をカラダの治療に使ってきたといいます。近代になり、1823年、彼らは自分たちのための治療用の入浴場を建設します。数年を経て、それが一般の人々にも開放され、1834年、温泉療養地としてのバード(BAD)の称号が認可され、街の名をバート・ナウハイムと呼ぶようになります。

1835年、9つの浴室とゲストルームを持つ二階建ての温泉治療施設が建設されます。湯治客はどんどん増えて、19世紀の終わりに新しいバーデハウス(温泉治療所)のシュプーデル・ホーフ(墳泉の館)が建設されます。それが、現在、街のシンボルになっている温泉治療館です。そして街は、近隣諸国の王侯貴族も訪れるクア(療養)の街に成長していきます。

ドイツ皇帝、ゲーテ、マルガレーテも利用した
温泉治療館


街の中央は、広大な面積のクアパーク(療養のための公園)です。そのクアパークを囲んで、様々な医療施設や療養の人々の宿泊施設、社交場(クアハウス)などが並んでいます。
保養地の宿泊施設にはクアドクターが居て、必用な治療施設が整えられています。その他にパブリック(公共)な治療施設があります。

街のシンボルであるシュプーデル・ホーフ(温泉治療館)はパブリックな治療館で、クアパークの北端にあります。
施設の中央広場に、二つの噴泉(微温の鉱泉)が湧き出ています。泉水は赤茶色で多くのミネラルと塩分を含んでいます。その噴泉を取り囲むように、当時(19世紀)流行のアールデコの装飾を取り入れた、ユーゲント様式のレンガ色の建物があります。建物はとても複雑で、7つの治療棟がまるで中世の迷路のように連なっています。それぞれの棟には装飾の異なる回廊式の中庭があります。
 
メインの治療棟に、重厚な寄木細工の円形のホールがあります。ここは治療の受付所と待合室で、時にはグループセラピー(精神療法などの治療を集団で行うこと)や、患者さんの教育などにも利用されます。
ホール正面のガラス窓の向こうの、回廊式の中庭には噴水と花々が見えます。その中庭を囲んで、個室の治療浴室やさまざまな治療室が並んでいます。
 
この治療館では、炭酸泉の入浴療法、ファンゴ(鉱泥)療法、クナイプ式水治療、さまざまな治療マッサージ、ハーブ療法、中国の漢方治療、インドのアーユルベーダ、最新の光線療法、電気治療、整体療法などを受けることができます。

ちなみに、ドイツの治療入浴は、日本のように大きな浴槽に入るのではなく、個室の浴槽で、温泉療法士さんの手に寄る治療法です。
また、治療は一種類だけで終わりということではありません。温泉治療の後に薬草茶を飲み、鍼治療とマッサージを受け、その後、一眠りする…というように、いくつかの治療が組み合わされて施されます。その方が、相乗効果が高まるからです。

治療の組み合わせプログラムは、病状に応じてクアドクター(療養の専門医)が処方してくれます。また、治療の経過に応じてプログラムが変わっていきます。
療養客は、パブリックな治療館で治療を受ける時も、その処方箋を持って行きます。
(個別の治療法については、×章をご覧ください)

ここシュプーデル・ホーフには、ドイツの最後の皇帝・ウィルヘルム二世、ロシア皇帝のニコライ、オーストリア皇女で絶世の美女・マルガレーテ、詩人のゲーテなどがたびたび療養に訪れたといいます。今でもマルガレーテ専用だった金色のモザイクタイルの浴室が残されていて、予約すると一般客でも利用できます。

微温の炭酸泉が
こころとカラダを沈静させる


シュプーデル・ホーフの特徴的な入浴療法に、高血圧の改善のための治療入浴があります。炭酸ガスを含んだ微温の鉱泉(約35℃)をバスタブに入れ、全身を沈めます。すると、水に溶け込んでいた炭酸ガスが皮膚に触れて、まるで魔法のように、乳白色の細かい気泡が全身を覆います。その気泡が皮膚から離れていく時に、こころとカラダを沈静化して血圧を安定させます。
この治療入浴を繰り返していると、高血圧が改善するといいます。他にも自律神経の調整や、不眠症、さまざまなストレス性の疾患、アトピー性皮膚炎の改善などにも役立つそうです。

治療のための遊歩道
テラインクア


街は徹底した環境保護に守られています。公共の駐車場は、車が人目に触れないように植木で覆われています。公園や通りには、「静かに」というプレートが、自己主張せずにひっそりと置かれています。街中の車道の横断は療養客が優先で、車は必ず止まってくれます。車椅子の通行にも困らないようにと、歩道の段差に工夫があります。

クアパーク(療養の公園)には、地形の起伏を利用した治療のための遊歩道(テラインクア)があります。テラインクアとは、遊歩道に起伏やカーブをつくり、歩行運動に負荷の変化を与えて、心臓や呼吸器、そして足腰の筋肉を強化するために設計された遊歩道のことです。
その遊歩道を、よく手入れされた緑の芝生が取り囲んでいます。ところどころに巨木が茂り、泉や噴水、お花畑や日当たりの良いベンチがあります。その道を、療養の人々が日差しを浴びながら、ゆっくり、ゆっくりと歩を進めています。まさに治癒の道です。

薔薇の村へ

 道が交差する角地に、薔薇の花を売るお婆さんを見かけました。「その花はどこから…?」と問うと、「隣村だよ。薔薇の村というの…」といいます。
翌日、その村に向かいました。車窓に薔薇の香りが漂い始め、村が近づいたことが感じられます。見渡す限り、薔薇の園が続いています。家々もまた、建物が見えないほどのツタ薔薇に覆われています。薔薇、薔薇、薔薇…。これほどの圧倒される薔薇の花を見たのは初めてのことです。
「薔薇の村」が本当に村の名前とは、なんてロマンチックなこと。

年間の利用客は70万人

バート・ナウハイムには、他の保養地と同様に、クアパークやコンサートホール、クアハウス(療養客のための社交場)などの文化・娯楽施設が整っています。
クアパークの周りには、糖尿病、心臓病、リウマチ、自律神経失調症、パーキンソン病などのさまざまな病気別の専門クリニックが多数あります。また、この街では多くの医学会も開催されます。そして、1年間に70万人もが訪れるといいます。

ドイツ人の場合、こうした滞在治療には健康保険が適用されます。ドイツの保険に加入していない場合は自己負担になりますが、その場合は、診察費、いくつかの治療費、ホテル(三ツ星クラス)の宿泊費、食事代などを含めて、一週間の費用は10~15万円程度(症状と治療法、宿泊施設のランクによって金額は異なる)で、決して高い金額ではありません。
ただし、問診や治療の説明のために、ある程度の英語の会話能力が必要です。ドイツ語の必要はありません。


●マイナスイオンによる呼吸療法
マイナスイオンを含んだ空気には、心身の鎮静作用、血圧の安定作用、免疫力の回復作用、活性酸素の消去作用などがあります。喘息、高血圧、睡眠不良、ストレス性の病気などの改善に役立つといいます。

●グループセラピー
同じ病気を持つ人々が集まり、抱えている悩みや、生活の工夫などを話し合うことによって、お互いを支えあう治療法です。
一人では孤独におちいったり、治療の継続に挫折したりしがちです。しかし、皆が集まり励ましあうことによって、それを防ぐことができます。また、「自分で治す」という積極性と、「治って元気になれる」という希望を与える効果があります。

●炭酸泉・微温入浴
微温(約35℃)の炭酸泉入浴には、心身の沈静作用、自律神経の調整作用、副交感神経の活性作用などがあります。
高血圧、喘息、不眠症、アトピー性皮膚炎、ストレス性の病気などの改善に役立つといいます。

●日光浴
日光浴には、気持ちを明るくする、季節性ウツ病を改善する、自律神経を調整する、免疫力を高める、カルシウムの吸収を助ける、皮膚の機能を強化する…などの、さまざまな生理作用があります。
日光に含まれる紫外線は、皮下脂肪をビタミンDに変える働きをします。そのビタミンDは、カルシウムの吸収を助けると共に、多くのがんの発生を防ぐ働きをするといいます。

●光線療法
太陽光線と同様の、可視光線、赤外線、紫外線を含んだ人工光線を浴びる治療法です。
日光浴と同様に、アトピー性皮膚炎、乾癬などの皮膚疾患や、季節性ウツ病、不眠症などの改善に効果があります。


バート・ナウハイム
ヘッセン州の中部、フランクフルトから北へ車で一時間弱の距離にある温泉保養地。鉄道のアクセスもある。

HESSISCHES STAATBAD BAD NAUHEIM
LudwigstraSe 20-22
61231 Bad Nauheim
TEL 06032-344-222
FAX 06032-344-239
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 15:59 | バート・ナウハイム

バード・トルツ

傷ついた鹿が傷を癒したヨード泉と
泥炭を用いるモーア療法の街

バート・トルツ

傷を負った動物の集まる不思議な泉。その泉の水を利用した飲泉療法。
植物が堆積した泥炭を用いるモーア療法。カラダを元気づけるシャンパン空気。
バート・トルツはリハビリや若がえりに人気の街です。

傷ついた動物の集まる不思議な泉

バート・トルツはミュンヘンから南へ約50キロメートルの、ドイツアルプスの麓を流れるイーザー川に面した山の斜面にあります。街の歴史は古く、この川を利用して、近郊で採掘される岩塩や木材、セメントなどを、ミュンヘンに運ぶための積出港として栄えていました。

19世紀の初め頃、イーザー川の対岸のサウエスブルクという場所で、狩人が傷ついた鹿が水を飲みに来る不思議な泉を見つけました。その後もたびたび、泉に集まる動物を目にして、その泉には病を癒す効果があるらしい…と、うわさされるようになります。
1846年に、専門家がその水を分析したところ、ヨード(ヨー素)をはじめ、さまざまな植物成分やミネラルを多く含むことが分かりました。
ヨードは海草に多く含まれている成分で、甲状腺ホルモンの生成に欠かせない栄養素です。しかし、ヨーロッパの内陸地方では、海が遠く、簡単には海草が手に入らないので、当時は、ヨード欠乏症による甲状腺の異常に悩む人が多くいました。その人々がヨード泉の水を求めてトルツの街を訪れるようになります。

さらに、この水には免疫力を高める、血液をサラサラにする、老化の進行を防ぐ、などの効果があることが分かり、しだいに療養客が増えていきます。
また、このヨード泉のお風呂に入ると、肌がしっとりとなめらかになることから、女性のための美肌・若がえりの治療も行われるようになります。また、ヨード石鹸も人気を呼びます。


積出港から療養の街へと変身

こうしてトルツの街は、木材などの積出港から、ヨード泉を利用した保養地へと変身していくことになります。1899年には、バイエルン州から保養地の称号である「バード」が認可されて、療養の街・バード・トルツとして国際的に知られていきます。

現在のバード・トルツはイーザー川をはさんで、山の斜面の旧市街と、平坦な土地の療養地区に分かれています。
旧市街は、石畳みの一本の急な坂道を中心に、古い建物が並び、カフェやレストラン、歴史資料館などが軒を連ねる、風情あるたたずまいです。坂道を登りきった小さな広場には噴水があり、その中央の高い台座に祀られた聖母マリア像が、太陽を浴びて燦然と輝き、まさに神々しく見えます。
石畳みの道は南西に面して日当たりが良いので、雨が降らなければ、道全体がオープンカフェに様変わりして、日光を求める人々の憩いの場所です。夕暮れには、全員が夕日に顔を向けて座り、人も、街並みも、オレンジ色に染めつくされます。

一方の療養地区は、対岸のヨードの泉が発見された場所に、19世紀半ばから造成されたものです。その中心はクアパーク(療養のための公園)で、周囲にはクアホテル(療養のためのホテル)や、サナトリウム、治療施設、クアハウス(療養客のための社交場)、飲泉館(後述)などが建ち並んでいます。

療養地区のシンボルは、飲泉館の中央に造られた泉に立つ女性像です。療養の人々を治癒に導く女性像で、両手に掲げる二匹の蛇から、ヨード泉の水が流れ落ちています。
療養の人々は、決められた時間に、あるいは散歩の合間に、ヨードの水を館内の療法師さんにグラスに汲んでもらい、治癒の思いを込めて、静かに飲んでいます。この治療法を「飲泉療法」といいます。


「飲む野菜」ともいう飲泉療法

ヨーロッパでは、健康回復のために鉱泉水を飲む「飲泉療法」が盛んです。多くの保養地には「飲泉療法」のための施設があり、ドイツではその建物をトリンク・ハーレ(飲泉館)といいます。
飲泉療法は、鉱泉水に含まれるミネラルなどを摂取する治療法で、「飲む野菜」ともいいます。
野菜の主要成分の一つは、大地から吸い上げるさまざまなミネラルですが、アルプス山脈よりも北に位置するヨーロッパ地方では、冬の間、新鮮な野菜が無くなり、ミネラルの摂取が不足しがちです。その結果、さまざまな体調不良が起きやすくなります。
  一方、何万年もの間、地底にあった鉱泉水には、大地のミネラルやさまざまな成分が含まれています。「飲泉療法」はその鉱泉水を飲んで、野菜不足を解消しようというものです。
  
*飲泉療法
ミネラルを摂取するために鉱泉水を飲む治療法。

*ちなみに、日本の温泉水の中には、硫化水素などが含まれていて飲泉には不向きなものがあります。温泉水を飲む場合には、飲泉に適しているかどうかを必ず確認する必要があります。


植物の泥を用いる
モーア(MOOR)療法

 
 ヨード泉が湧き出る周囲の大地は、湿地帯の植物が長年にわたって堆積した泥炭層です。その泥炭には泉の水と同様に、ヨードやさまざまな植物成分、ミネラル、さらに硫黄、塩分などが含まれています。
バード・トルツでは、ヨード泉の飲泉療法に続いて、その泥炭を使用した温熱療法が行われるようになります。その植物性の泥療法を「モーア(MOOR)療法」といいます。ちなみに、鉱物性の泥を使用する治療法を「ファンゴ療法」といいます。
 
 モーア療法は、その泥を39~40℃に過熱してカラダを温める治療法です。
 モーア療法に使用する泥炭には、さらに手が加えられます。まず、泥炭を乾燥させて細かいパウダー状にします。それに数種類の薬草を加え、長期間発酵分解させて微粒子にします。このようして、さまざまな成分を含んだ微粒子の泥は、保温性や熱の浸透性がとても高く、肌の保湿性にも優れているといいます。
 モーア療法には、血管を広げて血液循環を高める、新陳代謝を高める、背骨を支えている筋肉の緊張をゆるめて神経の伝達を良くする、脊髄の造血活動を高める、リンパ液の循環を高める、免疫反応を高める…などの生理作用があります。

 近年になり、「ヨー素」が薬品として人工的に作られるようになると、バード・トルツのメインの治療法は、ヨード泉の飲泉療法からモーア療法へと移行していきます。


温熱で筋肉と神経を刺激し
自己治癒力を高める


 泥を使用する温熱療法はローマ時代から行われている治療法です。そして、現在のモーア療法には幾つかの使用法があります。

・泥炭に数種類の薬草を加え、長期間発酵分解させて微粒子にしたものを使用。
・さまざまな成分を含んだ微粒子の泥は、保温性や熱の浸透性がとても高く、肌の保湿性にも優れている。

・その泥を39~40℃に過熱して使用。

・全身浴    :バスタブに温めた泥を入れ、そこに入浴する。(約20分)
・全身温熱パック:泥を全身に厚く塗り、体温を逃がさないように顔だけ出して全身を毛布でぐるぐる巻きにされ、横になってすごす。(約30分)
・脊柱温熱パック:背骨を中心に泥を厚く塗り、神経の中枢を温める。(約30分)

いずれも、カラダを芯まで温めて、血行を促進、全身の神経を目覚めさせ、細胞を活性化し、新陳代謝を促進させます。
泥入浴の時間は約20分間。泥パックの時間は約30分間。カラダが温まると全身から発汗が始まり、やがて筋肉や神経の膠着が消え、全身にエネルギーのしみわたるのが実感できます。
泥入浴、泥パックの後は、シャワーで泥を洗い流し、ベッドでぐっすりと眠りにつきます。
この「眠り」にはとても重要な意味があります。この間に、カラダの修復や自己治癒が行われるからです。泥浴は全身の緊張を解き、血液循環や神経の伝達を良くして、睡眠中に行われる自己治癒の働きを、最大限に高めるための前章でもあるのです。

その後、治療目的に応じて、マッサージや電気治療、整体、骨格の矯正治療などが組み合わせて施されます。また、病気別に処方された薬草茶(ハーブティー)も飲みます。

モーア療法は、リウマチ、神経痛、関節痛、腰痛、背骨のゆがみ、肩こり、自律神経のバランスの異常、婦人病などの改善に利用されます。また、新陳代謝を高めることから、肥満、高脂血症、糖尿病などの改善や、老化の進行の防止などにも効果があります。


シャンパン空気が
カラダを目覚めさせる

 
 バード・トルツには、もう一つのユニークな治療法があります。それは、この土地特有の「シャンパン空気」というものです。
 バード・トルツは海抜700メートルの高さにあります。また、街の中央を流れるイーザー川をはさんで、両側には山並みが連なっています。そのため、この一帯は風の通り道になっています。ここを、北西地方からの谷風と、南の地方からの山風が交差して流れていきます。そして、温かかったのが急に寒くなる…という、1日の中での気温の変化がたびたび起きます。その変化に対して、カラダはその都度、順応する必用があります。それがカラダに良い刺激を与える…といいます。
また、バード・トルツの空気には冷気による独特の刺激があります。この空気を地元では「シャンパン空気」と呼んでいます。良く冷えた細かい泡のような刺激のある空気、というわけです。その空気が皮膚を刺激して、皮膚の機能を高めるといいます。皮膚の機能とは、体温の調整システムや、免疫システム、毛細血管の働き、末梢神経の働きなどを指します。

ドイツでは、こうした気温の変化を利用して、カラダの環境適応能力を高める治療法を「クリマクア(「気候療法」)と呼んでいます。クリマクアは、基礎体力の強化や、精神力の強化、病後のリハビリ、老化の進行の防止、呼吸器系疾患の改善などに利用されます。

また、この一帯は霧が発生しないので、喘息や肺疾患などの改善にも最適な環境です。そこで、バード・トルツではここでの気候療法を「ハイルクリマティシャ・クア」と名付けて、特別な効果をうたっています。
イーザー川に沿って長い遊歩道があり、療養の人々は、ウォーキングをしながらそのシャンパン空気を存分に浴びることができます。


リハビリや老化防止の療養ホテル
フリジア・レジデンツ


 バート・トルツを代表するクリニックの一つである「フリジア・レジデンツ」と、そこでの治療法の概要をご紹介しましょう。
 経営するのは、ラルフ・マンカイト博士で、リウマチの患者さんの機能回復や、喘息、呼吸器系疾患、老化やケガなどによる身体機能の不調症状の改善をメインにしています。また、心臓・血管病の患者さんも対象にしています。
 
建物は本館(フリジア・レジデンツ)、リハビリ客のための別館(リハ・レジデンツ)、そして治療館の三つに分かれています。本館と別館には、宿泊施設、療養食のレストラン、食事療法のための料理教室、セミナールーム、トレーニングジム、サロンなどがあります。
 治療館にはクアドクター(療養の専門医)の診察室、モーア療法室、インハレーション(吸引治療)室、物理療法室、整体療法室、マッサージ室などがあり、内科医、リウマチ専門医、糖尿病専門医と共に、それぞれの専門治療師が常駐しています。

ここでの主な治療法は、リハビリ、物理療法、カラダの矯正治療、運動療法、マッサージ、モーア(泥)療法、温泉入浴療法、アルゴ療法、インハレーション(吸引療法)、食事療法、心理療法などで、病状に合わせてそれらを組み合わせた治療プログラムを、3~4週間の滞在で行います。

ドイツの保養地での治療プログラムは、クアドクター(療養医)が処方し、症状の変化に応じて、プログラムが変えられていきます。症状の変化は、カラダに直接触れる療法士さんがいちばん良く把握できます。それをドクターに報告して、治療経過と共にプログラムが調整されるという連携プレイになっています。
また、滞在施設はホテル形式で、皆で過ごす場所がたくさんあります。院長先生はそこを巡回して、日常の生活の中で患者さんの症状の変化を把握し、治療プログラムを調整していきます。


リウマチの治療に
泥をニギニギする手の指の運動療法

リウマチの患者さんに、朝食前の日課として自分で行う面白い治療法があります。大きなボールに入れた温かい泥を、手の指でニギニギと握ることをくり返す「手の指・運動療法」です。
リウマチの患者さんは、朝の寝起きに手の指の関節が膠着していて、動きにくくなっています。それを長い間放置していると、関節が次第に変形しながら固まってしまい、自由に動かせなくなります。この関節運動はそれを防ぐために行われます。

温かい泥は手の指の関節の痛みを緩和し、また関節の動きを柔らかくするので、苦痛無く関節運動が可能です。このニギニギ運動を続けていると、次第に関節の機能が回復していき、手の指の変形が予防できます。
 また、リウマチの患者さんには「全身の温熱パック」が施されます。症状によっては、冷やした泥を使用する場合もあります。
 
リウマチの発症にはストレスが大きく関係しているといいます。そこで、保養地のストレスの無い環境に身を置いて、運動療法や食事療法を組み合わせた治療を続けていると、リウマチがかなり改善できるといいます。


生活改善セミナーと
カラダに良い食習慣のための料理教室


 ドイツの保養地ではどこでもそうですが、とりわけ、このクリニックでは「生活改善」の指導に力を注いでいます。
 館内には大きなセミナールームがあり、病気別や、食生活、運動方法、精神のコントロール法などの、さまざまなセミナーのスケジュールが食道の入り口に掲示してあります。
 また、多くの体調不良には、間違った、あるいは悪い食生活が関わっています。そこで、滞在中には食生活の改善法が徹底的に指導されます。そのための大きな調理実習室があり、数人が囲んで調理できる設備が並び、壁面には食べるべき「食材」のポスターが素材別に張ってあります。
 ここは治療センターであると共に、セルフケアのための教室でもあるのです。

治療棟の一階には、クナイプ水療法のための水槽があります。壁にはヒマラヤの絵が描かれ、水は氷河のような冷たさです。朝のウォーキングの後に、ここでクナイプ式の「足浴」をすると、身も心もシャキッとして元気が出ます。
 エレベーターの前には「健康のために階段を昇ろう」という掲示があり、「あなた自身が治すのだよ」というメッセージが伝わってきます。
 そういえば、ここの事務長さんはエベレストの登頂を何度か経験しているアルピニストで、ドイツ人にしては小柄で、笑顔の耐えない、元気一杯の方です。
  

フリジア・レジデンツ
院長:Dr.med Ralf Munkeit


◆主な治療領域
心臓・血管病
高血圧
低血圧
関節
背骨
リウマチ
ぜんそく
呼吸器疾患
骨折の治療後のリハビリ

◆主な治療法
リハビリ、物理療法、カラダの矯正治療、運動療法、マッサージ、モーア(泥)療法、温泉療法、アルゴ療法、食事療法、心理療法

◆施設概要
ベッド数:80シングルルーム
治療棟
食事療法のための料理教室
セミナールーム
運動療法のためのジム

◆治療期間
3~4週間の治療プログラム

◆食事療法
野菜、大豆食品、魚を中心にして、ビタミン、ミネラル、カルシウム、オメガ3などに重点を置いたメニュウ。動物性脂肪は除き、塩分は控えめ。
リウマチの痛みを防ぐための特別食がある。

バード・トルツの概要

・人口:17000人
・クリニック数:8病院
・クアホテル:8施設
・医師:15人

◆特徴的な治療法
ヨード泉の飲泉療法
ヨード泉の入浴療法
ヨード石鹸によるスキンケア
インハレーション(水蒸気の吸引療法)
イオントホレーズ(眼病の改善)

◆主な適応症
消化器系疾患
背骨のゆがみ
心臓・血管病
自律神経失調症
呼吸器系疾患
眼病
婦人科系疾患
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 15:55 | バード・トルツ

セバスチャニウム

クナイプ自然療法で
体質から精神状態、生活習慣までを治す

セバスチャニウム

1890年に、セバスチャン・クナイプ神父と医師たちによって創設された、クナイプ自然療法による最初の総合クリニックです。
ここでは現在も、クナイプ自然療法を基本にした治療が行われています。


体質を改善して、病気の根本治癒を図る
クナイプ自然療法


クナイプ自然療法の発祥の地であるバード・ヴォーリスホーヘン。街の中央通りはクナイプ神父の名前を付けた広い遊歩道です。その通りの中央に、クナイプ神父と神父の考えに賛同する医師たちによって開設された、最初の総合病院である「セバスチャニウム」があります。
ここでの「総合」とは、日本の総合病院のようにさまざまな診療科があるという意味ではなく、必用な自然療法が全て揃っているという意味なので、誤解なさらないでください。

セバスチャニウムにおける治療は、全て自然療法で行われます。
その基本になっているのが、120年前にクナイプ神父と医師たちによって確立された「クナイプ自然療法」で、これは全ての患者さんが実践する治療法です。
クナイプ自然療法とは、「クナイプ式水療法」「食事療法」「運動療法」「植物(薬草)療法」「規律(秩序)療法」の五つを組み合わせた治療法です。
また現在では、病状に応じて、入浴療法、泥パック、鍼灸、マッサージ、整体、呼吸療法、電気療法、光線療法、瞑想などのさまざまな治療法がプログラムの中に織り込まれます。

クナイプ自然療法は、現在抱える「症状」だけを治すのではなく、その症状の原因である「体質」や「生活習慣」、そして「精神面」の改善までを含んだ、いわゆる「根本治療」に主眼を置いています。また、化学薬品に頼るのではなく、すべての生活行為を利用しながら、患者自身が自ら積極的に体を治す治療法でもあります。
そのため、医薬品や現代医療では治療の難しい、生活習慣病やストレス性疾患、免疫不全症候群などの、いわゆる現代病の根本治療が可能です。また、老化による身体機能の低下や、リハビリにも有効です。 

日本の病院とは全く異なる
施設構成


クリニックに入ると、受付の横に恰幅の良い神父の肖像画があります。太い眉とギョロリとした大きな目には独特の威厳があります。
このクリニックは日本の病院とは大きく異なり、患者の個室や診察室、検査室以外は、施設の大半をさまざまな自然療法の治療室が占めています。
クナイプ式水治療室、治療浴室、薬草浴室、湿布室、吸引(呼吸)療法室、マッサージ室、物理療法室、鍼灸室、運動療法室、水中運動のための室内プール、光線療法室、治療用のティールーム、瞑想室、患者の教育のためのセミナールーム、食事療法のための食堂、植物性薬品だけを扱う薬局…など等。
これらの数多くの治療室を見て回ると、日本の病院は検査と薬の処方だけで、「本当の意味での治療は存在しない…」ということを痛切に感じざるを得ません。 
さらに院内には、患者専用の公園、花庭、娯楽室、カフェ、おしゃれなレストラン、それに加えて患者のためのビヤレストラン(!)まであります。また、クリニックの背後には、あらゆる自然の要素を盛り込んだ、広大な治療のための公園、クアパークが続いています。
 
このクリニックの患者用のベッド数は186で、医師は10名(ほとんどが自然療法医の有資格者)です。治療スタッフとしては、温泉治療師、マッサージ師、運動療法師、整体師、鍼灸師、薬剤師、管理栄養士、看護師が常駐しています。

治療のプログラムは総合医であるクアドクター(総合医)の診察の基に処方され、専門的な部分は専門医が担当します。
水治療やハリ、マッサージ、運動療法、物理療法などは療法士(テラピスト)が行ってくれます。
 また、クアパーク(治療用の公園)でのウォーキングや体操、日光浴、リラクゼーション、クリニックの正面にあるコンサートホールで開催される音楽の鑑賞、クアハウス(コミュニテイホール)でのダンスパーティなど、院外の生活も治療プログラムに織り込まれます。
 神父が計画した通りに、滞在とテラピストによる治療はクリニックで行われますが、それ以外の時間帯は、パジャマ姿でベッドに拘束されるのではなく、街の全体を利用して、全ての生活を利用して、楽しく治療が進められます。
  
現代医療では治せない
生活習慣病や体質病を改善


ここでの治療対象は、リウマチ、糖尿病、心臓・循環器系の疾患、喘息、自律神経の障害、不眠症、慢性疲労、免疫不全、神経痛などの痛み、消化器障害、泌尿器と婦人科の障害、老化による身体機能の低下、病気の回復期における諸症状、リハビリなどと、実に多岐に渡っています。

このクリニックを運営するのは、クナイプ神父が設立したクナイプ財団で、院内には大きな教会があり、看護師の多くが修道女であるのも特徴的です。また、病院とは思えない優雅なテーブルデコレーションの患者食堂に続いて、クナイプ神父が問診をした執務室がそのままの姿で残され、今も使用されています。


◆SEBASTIANEUM(セバスチャニウム)

KNEIPP‘ SCHE  STIFTUNGEN  SEBASTIANEUM
Kneippstrase 8 , 86825 Bad Worishofen

●クリニックの概要
・医師    :10名(総合医、専門医、精神科医/ほとんどの医師が専門医と自然療法医の資格をもつ)
・治療スタッフ:温泉治療師、マッサージ師、整体師、鍼灸師、運動療法師、薬剤師、栄養士、看護師、小児用看護師
・治療部門  :内科、自然療法科、マッサージ科、栄養療法科、精神療法科など
・ベッド数  :186床

●適応
・心臓・循環器系疾患
・リウマチ
・神経痛
・痛み
・糖尿病
・内分泌障害
・消化器障害
・呼吸器障害
・泌尿器障害
・婦人科障害
・免疫不全
・自律神経失調症
・慢性疲労
・不眠症
・身体機能の低下
・回復期における諸症状
・健康の再生・回復

●治療施設
クナイプ式水治療室、治療浴室、マッサージ室、物理療法室、鍼灸室、屋内プール、運動療法室、光線療法室、治療用ティールーム、患者用食堂、ビヤレストラン、娯楽室、瞑想室、教会、庭、公園
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 15:52 | セバスチャニウム

セバスチャン・クナイプ

自然療法の父
セバスチャン・クナイプ

ドイツにおける保養地の基本的治療プログラムと、街づくりの原型は
セバスチャン・クナイプ神父が考え出したものです。


クナイプ自然療法の原点は
神父自身の治癒体験にあった

 
1821年、セバスチャン・クナイプは、南ドイツ・アルゴイ地方の小さな村の貧しい機織り職人の家に生まれました。小学校を卒業後、日曜学校に通いながら機織りの手伝い、下男、左官工、日雇い労務者などの肉体労働にたずさわります。そして24歳の時に、貧しさからの栄養不足と過酷な労働による疲労から、肺結核を患ってしまいます。その上、薬も買えず、医者にも見放されます。
病気を抱えながら、27歳でミュンヘン大学の神学科に入学した彼は、図書館でヨハン・ジークムント・ハーンの著書「脅威なる水の治癒力」という本に運命的な出会いをします。この本に書かれた「冷泉療法」に感銘した彼は、自分の肺結核をこの方法で治せるのでは…と考え、ドナウ川の冷水に下半身(足?)を浸す方法を試みます。すると、水に入る前まではぐったりしていた体が、冷水浴の後には生き返ったように変わるのを実感したのでした。
「この方法ならきっと良くなる」、そう確信したクナイプ青年は、冷水に下半身を浸しては、家まで全速力で走って帰る…という、「冷水浴」と「運動」の組み合わせを毎日くり返しました。最初に直感したとおり、やがて結核の体は何事もなかったかのように元気に回復。
冷水の刺激によって引き出された「自己治癒力」を、彼は身をもって体験したのでした。

治療行為と
異端裁判のくり返しの末に

 
神学校を卒業し、30歳で神父になったセバスチャン・クナイプ神父は、身近でコレラになった信者に自分が体験した「冷泉療法」を勧めたところ、その人の病気が消えてしまいました。それをきっかけに、助けを求める人々を「冷泉療法」で治療するようになります。また、神父として信者の臨終の床に呼ばれると、そこでも瀕死の病人を治してしまうことが度々あったといいます。やがて、うわさは街中に広まり、大勢の人々がクナイプ神父のもとを訪れるようになります。

しかし、そのうわさは教会組織の上層部の耳にも届き、「怪しげな治療をしている悪い神父」と非難されて、僻地の教会に左遷されます。それでも神父を頼って訪れる患者の数は増えるばかりで、頼られては治療し、上層部ににらまれては左遷される…をくり返して、何度目かの左遷でヴォーリスホーヘンという小さな農村に着任します。

すでに治療家として有名になっていた神父ですが、ヴォーリスホーヘンへの赴任を機会に、治療活動を止めて神職に専念することを決意し、最後の締めくくりとして、自分が考案した治療の実践方法を記した「私の冷泉療法」を出版しました。
ところが、皮肉なことに、この本によって神父はますます有名になってしまい、さらに多くの患者が訪れることになります。そのため、やむなく治療を再開しますが、怪しげな治療をする神父として裁判にかけられてしまいます。
しかし、あまりにも多くの患者の病気が治っている事実に、裁判官は無罪と判定。さらにその裁判官までもが神父に治療を依頼したのでした。

無罪になった神父は、1888年に、ヴォーリスホーヘンの街に専用の「水治療室」を開設し、たくさんの患者の治療にあたっていきます。
また水治療は、強い刺激よりも弱い刺激を何度も与えることや、温水と冷水を交互に浴びることなどの方が、より高い治癒効果を引き出すことが分かりました。そして、水療法に改良を重ねて多様な「クナイプ式水療法」を考案していきます。

五つの自然療法を組み合わせた
クナイプ自然療法を確立


クナイプ神父は医師ではありませんでしたが、病気に対する洞察力は医師以上に優れていました。たくさんの患者に接するうちに、病気や体調不良には、偏った食事や運動不足、精神の不安定、生活の不摂生などが関わっていることに気付いていました。そして、薬(当時は薬用植物)だけではなく、良質な食事や適度な運動、規律ある生活によって、体質を改善することが病気の根本治癒につながる…と確信します。
自分が医師でないことに限界を感じていた神父は、医師の力を借りるために呼びかけたところ、当時の医学会を代表する多くの医師が協力を申し出でくれます。
その医師たちの参加を得て、神父が考案した「クナイプ式水療法」に、「食事療法」、「植物(薬草)療法」、「運動療法」、「規律(秩序)療法」を加えて、「クナイプ式自然療法」を確立します。

◆クナイプ自然療法
・クナイプ式水療法
・食事療法
・植物(薬草)療法
・運動療法
・規律(秩序)療法

最初の総合クリニック、
セバスチャニウムを開設


若い頃、貧しかった神父は多くの貧しい人々を病から救いますが、治療費を受け取ることはありませんでした。しかし、多くの患者からの献金や、治療を受けた内外の権力者たちから支援金が寄せられ、神父の資産は当時のドイツで一番の権力者であるビスマルク宰相の資産に匹敵するほどに膨れ上がります。
神父は、その資金で治療所を運営するための財団を作り、1890年に総合クリニックの第一号である「セバスチャニウム」を開設します。また、1893年には貧しい子供たちのために小児療養所も開設します。

ローマ法王庁公認の治療法として
認められる


1893年、オーストリアのヨーゼフ大公がクナイプ神父を訪れ、坐骨神経痛の治療を受けます。それ以来、大公は神父の財政的支援者となり、また、神父をローマ法王に紹介します。
1894年、神父はローマに赴き、法王・レオ八世の前で「体の自己治癒力」について講演。また法王の求めに応じて冷泉治療を行い、ついに「クナイプ自然療法」はローマ法王庁公認の治療法として認められます。
また、神父のもとに、近隣諸国の王室、アラブの王様、インドのマハラジャまでもが治療に訪れるようになります

同年には、神父の考えに賛同する25人の医師によって、最初の「クナイプ自然療法・医師連盟」が設立されます。
一般市民もまた、クナイプ自然療法の普及を図る協会を結成。やがて世界一の健康運動組織である「ドイツ・クナイプ連盟」に発展して、クナイプ自然療法はヨーロッパ各国やアメリカにまで広まっていきます。

生活行為と自然環境を利用して
病気の根本を治す

 
クナイプ自然療法は、現在抱える「症状」だけを治すのではなく、その症状の原因である「体質」や「生活習慣」、「精神面」の改善までを含んだ、いわゆる「根本治療」に主眼を置いています。そのため治療の多くは、食事、運動、休息、娯楽、瞑想、睡眠などの生活行為や、規則的な生活リズムを利用しながら進めていきます。つまり、「生活こそが治療の基本」というわけです。
また神父は、療養生活はよりよい自然環境の中で、きれいな空気や日光、清水、草花、森林、自然の起伏などを利用しながら、またストレスから開放されて、毎日楽しく過ごすことが一層治癒力を高める…と考えていました。
 
クナイプ神父が創り上げた
療養の街の原型


そこで神父は、街全体を豊かな自然に包まれた「治療施設」に造り上げていくことを計画します。そして、療養の人々のための遊歩道や、広大な治療用の公園(クアパーク)、治療用の運動施設、治療の合間に楽しむ娯楽施設、療養の人々の交流を図るコミュニテイホールなどを次々と造り、ヴォーリスホーヘンを自然豊かな長期滞在型の「療養の街」へと変貌させていきます。
ちなみに現在、ドイツ全土の健康保険が適用されるクアオルト(療養の街)は、神父が建設したヴォーリスホーヘンの街造りを原型にしています。

また、食事の大切さを感じていた神父は、農業改革にも着手し、周辺の農家を巻き込んで、食事療法のための薬効野菜やハーブの栽培に力を注いでいきます。
1891年には、治療に必要なハーブ薬品を製造するために、薬剤師のレオナルド・オーバーホイザーとともに、植物性成分のみを使用する製薬会社「クナイプ・ベルケ社」を設立します。

さらに、食事療法に必用な野菜を育てるために、農業改革にも着手していきます。治療に必用な生薬を作るために、天然成分を原料にする製薬会社「クナイプ・ベルケ社」を創設。自然療法士を育成するための全寮制(三年)の「クナイプ・スクール」も開校します。

*セバスチャニウム:後述
*クナイプ・ベルケ社:現在もヨーロッパで最も信頼されている、天然成分専門の製薬会社です。
*クナイプ・スクール:自然療法による治療法を総合的に教育する専門学校です。三年間の全寮制で、5年以上の臨床経験のある医師への特別教育も行っています。ちなみに、ドイツでは専門教育を受けた療法士(テラピスト)は、患者に直接の治療を施すことから医師と同格の立場にあり、症状や治療経過は常に担当医師に報告され、連係プレイができるようになっています。



1897年、クナイプ神父は聖ドミニコ修道院でその生涯を閉じます。

しかし、彼の死後も神父の考え方に賛同する医師たちによって、クナイプ自然療法は受け継がれていきます。そして現在も、クナイプ自然療法は「体の根本治癒」に最も有効な治療法として、また、クナイプ神父は「自然療法の父」として、広くドイツ国民に慕われています。

◆セバスチャニウム
セバスチャン・クナイプ神父が設立した総合病院の第一号で、現在もクナイプ自然療法による治療を行っています。

◆クナイプ・ベルケ社
治療に必要なハーブ薬品を製造するために、1891年にクナイプ神父と薬剤師のレオナルド・オーバーホイザーが設立した製薬会社。
現在も植物成分を利用して、薬品、治療用ハーブティー、スキンケア用品、入浴剤などを製造していて、ヨーロッパを代表する植物成分による製薬会社として、人々に信頼されています。


セバスチャン・クナイプ/年表(1821~1879年)

1821年 南ドイツ・ウンターアルゴイ県の小さな村、ステファンスリードで貧しい機織り職人
       の家に生まれる。
       小学校卒業後、日曜学校に通いながら、機織りの手伝い、下男、左官工、日雇い労務者などの労       働にたずさわる。
1842年 21歳の誕生日に生家が火災で焼失し、無一文になる。
1844年 23歳でディリンゲンにある中学校に入学。
1845年 肉体労働、過労、栄養不足などで、肺結核を患う。
1848年 ミュンヘン大学神学科へ進学。肺結核はさらに悪化し、医師からも見放される。
       図書館で、ヨハン・シグムント・ハーンの著書「驚異なる水の治癒力」に出会う。
       ディリンゲン近郊のドナウ川で下半身の冷水浴を試みる。その後、この冷水浴の後、全速で走って       帰宅するという自己治療を続ける。
       セバスチャン・クナイプは「私はドナウ川での水浴が、自分にとってよい薬であるとの確信を得た」と       語っている。
1852年 オットボレインの副司祭に就任。
1853年 ボースで初めて病気の人に水治療を行い、たくさんの人々の注目を集める。
       しかし、フェルハイマーの医師会、薬剤師会によって告訴され、地方判事より罰金を命じられる。
1885年 ヴォーリスホーヘンの聖ドミニコ修道院僧侶長に就任。
       修道院の仕事のかたわら、農業の改良を行い、何冊かの農業専門誌を執筆。
       神父の治療を受けるために多くの人々が街を訪れるようになる。
       反面、医師会や教会上層部から、治療に対する非難は続く。
1886年 人々への治療を止めることにし、かわって水治療を分かりやすく解説した「私の冷泉療法」出版。
       しかし、この本を読んだ人々が、さらにたくさん治療に押しかけるようになる。
       この本によって、ヴォーリスホーヘンはクナイプ療法を中心とした保養地に生まれ変わり、発展し        ていく。
1888年 クナイプ神父は、この地に最初の治療浴場を作る。
1889年 第2の著書「こう生きるべきだ」を出版。
1890年 クナイプ財団が設立され、クナイプ神父が名誉会長に就任。
       クナイプ司祭による第一回講演会が開催される。
       総合クリニックの第一号である「セバスチャニウム」を開設。 
       ヴォーリスホーヘンの街に療養客のための遊歩道と、コミュニテイホールが建設される。
1891年 植物成分のみを用いた製薬会社「クナイプ・ベルケ社」を設立。
1893年 小児療養所、及び第2財団が設立される。
       オーストリアのヨーゼフ大公が治療に訪れる。
1894年 25人の医師によって、国際クナイプ医師連盟が設立される。
       ローマ法王庁訪問。法王・レオ8世よりクナイプ司祭の業績がたたえられる。
1896年 クナイピアヌムス第3財団が設立される。
1897年 聖ドミニコ修道院にて、その生涯を閉じる。
       神父の死後も、彼の治療法の信奉者や医師などの後継者によって、治療が継続される。
1920年 バイエルン州庁より、ヴォーリスホーヘンにクアオルトの称号が与えられ、地名頭にバード(BAD)       が付けられて、正式にバード・ヴォーリスホーヘンとなる。
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 15:49 | セバスチャン・クナイプ

バード・ヴォーリスホーヘン

セバスチャン・クナイプ神父と
クナイプ自然療法の発祥の地

バード・ヴォーリスホーヘン

身を切るような冷水にカラダを浸す「冷泉療法」。
植物の機能性成分、食事、運動、精神、節制などを組み合わせた
保養地医療の基礎となる「クナイプ自然療法」。
その治療法はこの街で生まれました。

セバスチャン・クナイプ神父のゆかりの街

バード・ヴォーリスホーヘンは、ミュンヘンから南西に車で2時間ほどの、とてものどかな農村地帯にあります。周辺一帯には緑の牧草地が続いていて、車窓からは堆肥の臭いがほのかに流れ込んできます。街道の両側では、放牧の牛がのんびりと牧草を食んでいます。
この地は温泉があるわけでもなく、特別に気候が良いわけでもありません。
しかしここは、ドイツの保養地の中で、特別な意味を持っている街です。それは「クナイプ自然療法」の考案者であるセバスチャン・クナイプ神父が築いたクア(療養)の街だからです。
ちなみに、保養地に滞在して療養することを「クア」といいます。
この街に滞在するクア(療養)の人々は皆、クナイプ神父のゆかりの土地で、クナイプ自然療法による治療と、クナイプ神父の提唱する生活実践(療養プログラム)を目的にしています。

街に入ると、のどかな農村風景は一変します。緑と花々に囲まれた街並みはとてもおしゃれです。療養の人々にも気品が感じられます。その人々を見守るように、街のいたるところにクナイプ神父の肖像画が掲げられています。
 

憩いの遊歩道
セバスチャン・クナイプ通り
 

街の中心に「セバスチャン・クナイプ通り」と名づけられた広い遊歩道があります。遊歩道の中ほどの広場には大きな噴水があり、やや太り気味のセバスチャン・クナイプ神父の大きな銅像が、カフェやベンチでくつろぐ療養の人々を見守っています。そういえば、クナイプ神父は治療用のビールまで造っていたというから、なるほど…と思える大きなビール腹です。
 そのクナイプ通りの中央に、クナイプ神父が創設した総合クリニックの第一号の「セバスチャニウム」があります。ここでは現在も、今から120年前にクナイプ神父や医師たちによって確立されたクナイプ自然療法による治療が続けられています。(詳しくは後述)

また、遊歩道の周りには、療養の人々に娯楽を提供するクアハウス(社交場)や、屋外コンサートホール、処方箋に従った料理を出してくれるレストラン、カフェ、植物成分を主成分にした薬やサプリメントを扱う薬局、日用品のお店などが並んでいます。

その遊歩道に沿って、身を切るような冷水の小川があります。小川の横にはその冷水を利用したクナイプ水療法(後述)の水槽があり、誰でも利用できます。 
また、遊歩道にはさまざまな噴水や、花壇、休憩用のベンチなどが配置されています。療養の人々は、治療の合間にこの界隈でお茶を飲んだり、ダンスやコンサートを楽しんだりします。そうした楽しみもまた、治療法の一つなのです。


小さな村が
療養の街に生まれ変わる


かつて、ヴォーリスホーヘンは人口1000人足らずの、本当に小さな農村でしかありませんでした。ところが、1855年にセバスチャン・クナイプ神父がこの村の教会に赴任すると、村の様子が一変することになります。

ここで、クナイプ神父について少しお話しておきましょう。
神父は若い時に、貧しさと過酷な労働のために、肺結核になります。しかし、医師に払うお金が無く、何とか自分で治そうとします。そして、図書館でヨハン・ジークムント・ハーンの著書「脅威なる水の治癒力」という本に運命的な出会いをします。
この本に書かれた「冷泉療法」に感銘した彼は、自分の肺結核をこの方法で治せるのでは…と、ドナウ川の冷水に下半身(足?)を数秒間浸す方法を試みます。すると、水に入る前まではぐったりしていたカラダが、冷水浴の後には生き返ったように変わるのを実感したのでした。
「この方法ならきっと良くなる」、そう確信したクナイプ青年は、冷水に下半身を浸しては家まで全速力で走って帰る…という、「冷水浴」と「運動」の組み合わせを毎日くり返しました。最初に直感したとおり、やがて結核のカラダは何事もなかったかのように元気に回復。冷水の刺激によって引き出された「自己治癒力」を、彼は身をもって体験したのでした。

神学校を卒業して神父になった彼は、身近でコレラになった信者に自分が体験した「冷泉療法」を勧めたところ、その人の病気が消えてしまいました。それをきっかけに、助けを求める人々を「冷泉療法」で治療するようになります。やがて、うわさは広まり、大勢の人々がクナイプ神父のもとを訪れるようになります。
しかし、そのうわさが教会組織の上層部の耳に届き、「怪しげな治療をしている悪い神父」と非難されて、僻地の教会に左遷されます。それでも神父を頼って訪れる患者の数は増えるばかりで、頼られては治療し、上層部ににらまれては左遷される…をくり返して、何度目かの左遷で、この辺鄙な農村のヴォーリスホーヘンに着任します。

すでに治療家として有名になっていた神父ですが、ヴォーリスホーヘンへの赴任を機会に、治療活動を止めて神職に専念することを決意し、最後の締めくくりとして自分の治療の実践方法を記した「私の冷泉療法」を出版しました。
ところが、その本によって神父はますます有名になってしまい、さらに多くの患者が訪れることになります。そのため、やむなく治療を再開しますが、怪しげな治療をする神父として裁判にかけられてしまいます。しかし、多くの人々の病気が治っている事実に、裁判官は無罪と判定。さらにその裁判官までもが神父に治療を依頼したのでした。

無罪になった神父は、1888年、ヴォーリスホーヘンの街に水治療室を開設して、たくさんの人々の治療にあたっていきます。そしてまたたく間に、ヴォーリスホーヘンは小さな農村からクナイプ式水療法の保養地に生まれ変わり、大きく発展していきます。

(詳しくは「セバスチャン・クナイプ」をご覧ください)

クナイプ神父は1897年にこの街で亡くなりますが、その後も、医師や療法師たちによって「クナイプ自然療法」は継承されていきます。
そして1920年に、この街はバイエルン州庁からクアオルト(療養の街)として公認され、バード(BAD)の称号が与えられて、バード・ヴォーリスホーヘンと呼ぶようになります。


クナイプ神父が築いた
クア(療養)の街の原型


クア(療養)の治療は、きれいな空気、日光、温泉(鉱泉を含む)、清水、草花、森林、自然の起伏、気候などの自然環境や、薬用植物、野菜の有効成分など、自然の素材そのものを利用して行われます。また、食事、運動、休息、入浴、娯楽、睡眠などの日常の生活行為を利用します。
自然の素材と生活をトータルに利用する治療法は、クナイプ神父が考え出したものです。そして神父は、バード・ヴォーリスホーヘンをその実践のための街に造り上げたのです。

現在ドイツには、健康保険が適用される療養のための保養地がたくさんありますが、クアの街(クアオルト)として認定されるためには、次のような条件をクリアしなければなりません。

・クア(療養)の要件を満たした、医療施設、宿泊施設が整っている。
・クアドクター(医師)と、各種・専門治療師が常駐している。
・樹木や草花、水の流れ、噴水、広場など、人々がリラクゼーションできる街づくりである。
・治療のために設計されたクアパーク(治療の公園)がある。
・運動療法のための各種スポーツ施設がある。
・提供される食品は、完全無農薬、有機栽培である。
・提供される食品は、基本的に地元で生産できる。
・街のレストランやカフェでは、処方箋にしたがった治療食が提供できる。
・文化的な催しや娯楽が提供できるクアハウスや、コンサートホールがある。
・自然との触れ合いのためのハイキングコースや、サイクリングコースがある。
・無公害である。(街の中心には車の乗り入れができない)
・騒音がない。
・適切なゴミ処理やリサイクルが実施されている。
・建物や建築材料が制限される。
・街の周囲の自然が保護されている…など等。

実際は、さらに多くの条件があり、認定を受けたクアオルトではおよそ健康の回復を阻害するようなものはない…といっても過言ではありません。そうしたクアの街の原型が、ここバード・ヴォーリスホーヘンなのです。


生活を利用して体を治す

クアの治療は、生活そのものが治療法です。
例えば食事。私たちの体をつくる原料が食べ物であることを考えれば、その人の体質の改善につながる食事も治療の一環といえます。
そして、運動。これも体の生理機能を高めるためにはとても大切なことです。一番簡単な運動は散歩やウォーキングですが、そのためにクアオルトには必ず広大なクアパーク(治療のための公園)が用意されています。

クアの日常生活は、早起きをしてクアパークをウォーキングし、良質の食事を楽しみ、緑の中で瞑想し、ベンチで日光浴をし、温泉プール(微温)にゆっくりとつかり、さまざまな生活トレーニングを受け、またコンサートやダンスを楽しんだり…と、心身にメリハリを与える生活が工夫されています。
そうした生活は、精神と肉体の調和を図り、自律神経のバランスを整え、自己治癒力を高めてくれます。その結果、体質が改善できて、病気が治り、前よりも元気に生まれ変わることができるというわけです。

つまり、クアでは朝起きてから夜眠りにつくまでの、生活行為のそのものが「クスリ」と「治療」なのです。


自然環境を利用して体を治す
治療の公園・クアパーク


この街の約三分の二の面積を、広大で緑豊かなクアパークが占めています。クアパークとは治療のための公園のことで、その利用にはドクターの処方箋が必要です。

クアパークには、さまざまな樹木や、広い芝生、色とりどりの草花、遊歩道、池、噴水、ベンチ、東屋、冷水療法のための水槽などが配置されています。
実は、これらは全て、自然環境を治療に利用するために設計されたものです。
巨大な樹木は、療養の人々に新鮮な空気とフィトンチッドを与えるためのものです。緑の芝生はグリーンセラピーのリラクゼーション作用のために。また、太極拳やヨーガ、瞑想の場所として利用されます。
ゆるやかな起伏の遊歩道は、ウォーキングを中心にした運動療法のためのものです。池や噴水はマイナスイオンで呼吸療法を助けるためのものです。色とりどりの草花は、療養の人々の気持ちを明るくするために。日当たりの良いベンチは、日光浴で体内リズムを調整するためにあります。
冷水が流れる水槽は、足浴・腕浴のクナイプ式水療法で、免疫力や自己治癒力を高めるためにあります。また、朝露の降りた芝生の上を裸足で歩く「露草踏み療法」のための特別な芝生もあります。
さらに、体力の回復した人にはテニスコートや、長距離のサイクリングコースまであります。
園内には教育用のハーブガーデンや菜園があり、薬草や食事療法に使用される野菜が栽培されていて、療養の人々は散歩の合間に植物(薬草)療法の知識を得ることができます。

このように、自然の素材を治療に利用するための公園造りのアイデアは、クナイプ神父の考案によるもので、現在、クアパークはクア(療養)の街には必ず無ければならない治療施設の一つとして条例に定められています。


冷水の刺激が
生理反応を引き出す


この街には、身を切るような「冷水」が湧き出ています。その冷水を利用してクナイプ神父は「水治療」を行いました。
現在、水治療には100種類もの方法がありますが、自分でやれる最もポピュラーな方法は「冷水歩行浴(水踏み)」と「冷水腕浴」です。
「冷水歩行浴」は、膝下までの冷水の中を、水中から足を引き上げては沈めるという、水鳥のサギのような歩き方で水槽の中を歩く、ちょっと不思議な治療法です。
一方の「冷水腕浴」は、肘から下の両腕を冷水の中に1~2分間浸すものです。どちらも、終えた後はカラダが驚くほどスッキリとします。ただし、冷水でないと効果がありません。

この街には冷水浴の水槽が広場や公園などのあちこちにあります。また、ホテルや病院にも必ずあります。療養の人々はもちろん、街で働く人々も皆、散歩や運動、仕事の合間に、冷水の足浴・腕浴をして、カラダを元気づけています。

◆冷水療法
冷水浴はクナイプ神父が若い頃に自分自身の結核を治した「冷泉療法」の一つで、冷水の刺激が体の生理反応を目覚めさせ、血行を促進して、全身の活力を引き出し、治癒力を活性化させる…といいます。

詳しくは「クナイプ式水療法」をご覧ください


体を根本から治す
クナイプ自然療法


クナイプ自然療法とは、19世紀半ばにクナイプ神父と、神父の考えに共鳴する医師たちによって体系化された、自然療法による総合的(全人的)な治療法です。
その内容は、体質改善や病気の治癒に欠かせない「食事療法」「運動療法」「植物(薬草)療法」「規律(秩序)療法」を基本に、クナイプ神父が考案した「クナイプ式水療法」を加えた五つの治療法で構成されています。

◆クナイプ自然療法
・食事療法
・運動療法
・植物(薬草)療法
・規律(秩序)療法
・クナイプ式水療法

クナイプ自然療法は、現代医療のようにクスリの力で強制的に病気の症状を抑えるのではなく、生活行為や自然の力(素材)を利用して、生理システムの調整や、体質改善を図りながら、体全体の根本治療を行う治療法です。
そのため、病気になる前よりも健康な体に生まれ変わることができることから、百年以上の時を経た今でも、理想的な治療法としてヨーロッパの人々に深く信頼され続けています。
また、現在のドイツの保養地で行われている「療養の基本プログラム」は、この「クナイプ自然療法」をベースにしています。


クナイプ神父が創設した
最初の総合治療クリニック、
セバスチャニウム

 
クナイプ神父が創設した総合クリニックの第一号の「セバスチャニウム」は、この街のシンボルでもあります。
その施設構成は、日本の病院とは大きく異なっています。診察室・検査室や患者さんの個室以外は、クリニックの大半をさまざまな自然療法や物理療法の治療室が占めているからです。
 その治療室とは、クナイプ式水治療室、入浴治療室、薬草浴室、湿布室、吸引(呼吸)療法室、マッサージ室、物理療法室、鍼灸室、運動療法室、水中運動のための室内プール、光線浴室、治療用のティールーム、瞑想室、カウンセリングルーム、患者さんのためのセミナールームなど等。 
さらに院内には、患者専用の公園、花庭、娯楽室、カフェ、食事療法のためのおしゃれなレストラン、それに加えて患者用のビヤレストラン(!)まであります。

病院とは思えない優雅なテーブルデコレーションのレストランに続いて、クナイプ神父が問診をした執務室が、当時のままの姿で残されていて、今も問診に使用されています。

ここでの治療は、「クナイプ式水療法」「植物(薬草)療法」「運動療法」「食事療法」「規律(秩序)療法」の五つを基本にしていますが、病状に応じて入浴療法、泥パック、鍼灸、マッサージ、整体、吸引(呼吸)療法、電気治療、光線療法、瞑想などのさまざまな治療法がプラスして処方されます。

(詳しくは「セバスチャニウム」をご参照ください)


年間、7万5000人もが
療養の長期滞在


街には、神父が治療した最初の水治療館も当時のままに保存されています。水治療館はとても小さな木造の建物ですが、入り口の前には建物の十倍以上もある、渡り廊下のような長い軒が延びていますが、それは治療の順番を待つ患者さんたちの待合所だったそうです。その壁に、治療に訪れた大群衆の写真が掲示されていて、神父のもとにいかに多くの人々が治療に訪れたかを知ることができます。
聖ドミニコ修道院に隣接してクナイプ神父の足跡をたどる博物館があり、当時使用していた「製薬用具」や、神父の居室などが展示されています。
神父が司祭を勤めていた教会の天蓋には、キリストに代わって、セバスチャン・クナイプ神父の大きな肖像が描かれ、ミサに訪れる人々を見下ろしています。
また、クナイプ神父が創設した天然成分だけを使用する製薬会社「クナイプ・ベルケ社」や、自然療法・物理療法の療法士を育成する「クナイプ・スクール(三年間の全寮制)」もあります。ここでは、自然療法・物理療法の総合的な教育を行っており、5年以上の臨床経験のある医師を対象にした特別教育プログラムもあります。

街には「セバスチャニウム」のほかにも、療養のための宿泊施設が200軒もあります。豪華な五つ星ホテルから、安価に利用できるペンションまであるので、自分の好みや予算で滞在施設を選ぶことができます。またそれぞれの宿泊施設には必用な治療施設が整備されています。
現在、この街には、長期滞在の療養客が1年間で7万5000人も訪れるといいます。街の居住人口は約1万5000人で、その殆どが医療関係者や療養の人々をお世話する仕事に従事しています。


●治療法の解説

◆クナイプ式水療法

クナイプ式水療法は、水温(冷水・温水)による刺激や、水流、水圧などを利用して、
カラダのさまざまな生理反応を引き出す治療法です。
血行を促進させる、自律神経を調整する、 自己治癒力を活性化させる、刺激に対する抵
抗力を強化する、カラダの自己調整能力(ホメオスターシス)を高めるなど、カラダの基本的な生理活動(生理反応)を調整する作用があります。また、心身のバランスを安定させる、精神力を強化するなどの作用もあります。
その方法には、冷水浴、温水浴、温冷交互浴、注水、湿布、清拭、蒸し風呂などと、水
の使い方が100種類以上もあり、治療目的に応じて細分化されています。

◆食事療法

食事療法は、質の良い自然な食材、食事の方法、食べ物の栄養成分などを利用して、体
質の改善や生理活性を引き出す治療法です。また、絶食や食事の制限などもこの中に含まれます。
クアで提供される食事は、新鮮な野菜や全粒の穀物を主体にしています。病状に応じて
栄養バランスや摂取カロリーなどがコントロールされます。
素材は無農薬で有機栽培、地元産のものを使用します。地元産にこだわる理由は、栄養
面から考えて鮮度がとても大切だからです。
一方、動物性脂肪、動物性タンパク質、砂糖などは制限され、塩分は必要最小限を摂取
します。
  
 食事制限がある場合は、クアの街のレストランやカフェでは、自分のクアカード(処方
箋を見せると、そのための特別食を出してもらうことができます。

◆運動療法

運動療法は、体を動かすことで、生理活動の活性や自律神経の調整、身体機能の回復、
免疫力の向上などを図る治療法です。体質改善やストレスの解消、精神力の強化などにも応用されます。
呼吸運動、ストレッチ、ウォーキング、ヨーガ、ノルディックウォーキング、ジムトレ
ーニング、水中運動、ダンス、サイクリング、トレッキング、その他に治療効果が期待できるスポーツなどが、病状に応じて医師によって処方されます。
身体の機能回復を図るマッサージや整体治療も、運動療法の中に含まれます。

運動の後には必ず休息が必要です。体の生理リズムは、体を動かした後に体を休めるこ
とによって正常に調整されるからです。
また、体の修復や自己治癒の活動は睡眠中に行われますが、睡眠の質を高めるためにも
運動療法が利用されます。

クアオルトにはクアパークをはじめ、リハビリ施設やスポーツ施設(治療のための)、サ
イクリングコースなどがあります。クアオルトでは身体機能のリハビリから体力の強化までの、幅広い運動療法の実践が可能です。

◆植物(薬草)療法

植物療法は、薬草や植物の有効成分を用いる治療法です。
クアで利用されるクスリは植物性が原則です。また、薬草はハーブティー、入浴剤、湿布、アロマエッセンスなどと、さまざまな形で利用されます。
病気(症状)別に薬草がブレンドされたハーブティーがあり、それをゆっくり楽しむテ
ィータイムも治療のひとつです。
さらに、薬草の湿布、薬草入浴、薬草成分の入った水蒸気の吸引、香りの機能性成分の
利用(アロマテラピー)など、植物療法にもさまざまなものがあります。

◆規律療法

規律(秩序)療法は、精神と肉体の調和(バランス)を図る治療法です。
運動と休息、緊張とリラックス、仕事と休日というように、対極にあるものの組み合わせによって、体とこころの一体感を作り、生理的なバランスを調整します。
趣味や娯楽などの楽しみを利用し、生体にメリハリを与えることも重要です。
また、規律ある生活を送る、体に悪い生活を排除する…などの節制もまた、生体を正常
に機能させるためには欠かせない要素です。
 ちなみにクナイプ自然療法では、精神療法は規律療法の中に含まれています。

 クアオルトでは、街に用意されたさまざまな施設を利用しながら、変化のある生活を楽
しむことができます。

◆精神療法

病気の発症に関わるストレスや、悲観的な感情などの心理的要因を解消し、精神状態を
安定させる治療法です。
カウンセリング、瞑想、呼吸法、自律訓練法、音楽療法、色彩療法、森林浴などのさま
ざまな治療法があります。
また、リラクゼーションマッサージや、同じ病気を持つ人々が集まり語り合うグループ
療法にも、こころを安定させる作用があります。

クアでは、リラクゼーションや娯楽による楽しみなどの精神面のコントロールがとても
重要視されます。
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 15:46 | バート・ヴォーリスホーヘン

長岐俊彦・プロフィール


1942年生まれ。
デザイナー、雑誌編集者を経て、マーケティングプランナーに転進。
百貨店、ショッピングセンターの開発、商品開発などのプロジェクトメンバーを約25年間続ける。その間、アメリカやヨーロッパ各国の市場調査を行う。
1990年代より、生理学的視点で医療関係の調査・研究に着手。
1994年より、ドイツを中心としたヨーロッパの医療の調査を開始。そこで、保養地医療を中心とした、自然療法・生活療法と出会う。
以来、ドイツ、オーストリア、スイス、イタリー、フランス、ギリシャなどにおける保養地の医療施設や大学を訪ね、自然療法・生活療法の調査を継続。生活習慣病や免疫疾患、心身症の治療方法、老人性機能障害の改善など、日本の医療に欠けているセルフケアの方法に関する情報整理を行っている。
2007年10月、自然療法・生活療法情報誌「治す力」を創刊。
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# by na-toshihiko | 2010-07-26 15:31 | 長岐俊彦・プロフィール

自然療法
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